研究課題/領域番号 |
24654133
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
阿久津 智忠 国立天文台, 光赤外研究部, 助教 (40564274)
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キーワード | 量子光学 / 超精密測定 |
研究概要 |
本研究の目的は、量子測定理論を応用した、全く新しい方式の超精密測定方法を構築することである。これまでの量子非破壊測定は、不確定性原理の壁を打ち破るための測定系が複雑化し、原理検証実験に留まることが多かった。これに対し、近年研究の進められてい る量子論的な弱値(weak value)の増幅を応用すれば、比較的シンプルな測定系で高精度な測定が可能である。本研究では、この原理を応用した精密測定法の実用化を達成すべく、その基礎的手法を実験的に検証することを目指している。 平成25年度は、前年度で検討をすすめた光源および主光学系部分のうち、光源をパルスレーザー光源とする方向で全体の開発をすすめた。光源は、主にコストカットの面から、大部分を内作することとした。これは希土類がドープされたファイバーを用いたキャビティーによってレーザーを発振させ、これをパルスに整形する設計となっているものである。また、光学系部分は当初の計画のとおりシンプルなマイケルソン干渉計の構成をとることにした。また、光キャリアの周波数シフト量を取得する信号取得系部分について開発を開始した。信号取得系部分に関しては、当初想定していたもの以外のアイデアについても精度とコストの両面から検討を重ねた。これについては、年度内には議論を収束させたうえで具体的な信号取得用光学系を組むにまでいたらなかった。年度内は、光ローカルオシレータを用いた周波数シフト量の検出方法の概念設計までを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
特に光キャリアの周波数シフト量をいかに検出するかという信号取得方法をめぐって、いくつかのアイデアがあり、その方法ごとに達成できそうな精度と、そのための信号取得用光学系を実装するのに必要なコストの面から検討することに時間を費やした。光コム、もしくは単色連続波の光などを光ローカルオシレータとして信号ポートに入力し、主光学系(マイケルソン干渉計)からの出てくる信号光とビートをとって周波数のシフト量を推定する方法のほか、より直接的に回折格子などを開発して空間分光を行い、それをCCDやCMOSなどを用いて画像として周波数シフト量を推定する方法などが検討された。年度内にこれらの議論を収束したうえで、さらにこの信号取得のための光学系を実際に構築するまでに至らなかった。年度内には信号取得用の光学系の概念設計までを行い、実際の実装および性能確認は次年度とすることにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に時間をかけた信号取得系部分の検討結果を生かし、平成26年度は主にその構築を開始する。こうして、光源、主光学系(マイケルソン干渉計)、信号取得系までを合わせて構築した後、マイケルソン干渉計の腕の差動変動に対する、光キャリア周波数のシフト量の発生量(信号の伝達関数)および信号取得系における原理的な雑音量などから、本検出器の性能評価までを行う。信号取得系としては、必要感度とコストの両面から検討して、まずは単色連続波の光ローカルオシレータによる信号光のビートから光キャリアの周波数シフトの推定を試みる。その後、可能であれば、光コムなどを用いるなどより安定度の高い推定方法に移行すことを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本実験で開発しようとしている光源、光学系、信号取得系のうち、平成25年度に開発および実装予定の信号取得系部分の検討をすすめたが、光キャリア周波数のシフト量の検出方法について新たにローカルオシレータ光を導入して検出精度を高める方法が見つかったため見直しが必要となった。この結果を生かした信号取得用光学系を実装するにあたって、今年度の光学部品購入は間に合わないので次年度購入することとしたい。 次年度は信号取得用光学系の実装と、場合によっては光源の性能向上のために、光学部品類を中心に購入する予定である。また、データ取得のための装置のほか、実験環境の工場のために、光学台を覆う風防の購入も予定している。そのほか、得られた成果発表のための旅費にあて、終了する予定である。
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