研究課題/領域番号 |
24654134
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川勝 年洋 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20214596)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | トポロジー不変 / 自己無撞着場理論 / 高分子濃厚系 / 粘弾性 |
研究概要 |
本研究は、ガウスの絡み目不変量を取り入れた自己無撞着場理論の一般的定式化を行うことで、トポロジーを不変に保つ拘束条件下での高分子濃厚系の平衡構造と粘弾性特性を計算する手法の開発を目的としている。 この手法開発のためには、任意の非平衡のボンド分布に対応した自己無撞着場理論の定式化が必須となるため、まずボンド配向に対応するベクトル秩序パラメタを含んだ自己無撞着場理論を開発した。ボンド配向が非等方的に分布する場合の効果を高分子の経路積分の方程式にポテンシャルの形で取り入れる定式化とボンド分布の拡散の異方性で取り入れる2つの定式化の方法を試してみた結果、ポテンシャルで取り入れる方法が有効であることがわかった。この手法はカイラリティを有するブロックを持ったブロック共重合体のミクロ相分離にも応用が可能であり、ヘリカル構造をもったドメインの予測などに利用された。 この手法を粒子-連続場ハイブリッド・シミュレーションに移植することで、計算効率を上げる試みは、粒子描像にもとづくMDシミュレーションやMCシミュレーションの持つ熱揺らぎの効果のために計算精度の問題を生じており、解決策を模索している。また、ボンド配向の分布関数を経路積分計算の発展方程式の空間微分項に含めるかあるいはポテンシャル項に含めるかで2通りの可能性が考えられるのだが、どちらの手法が現実系を的確に記述できるかについてテスト計算を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
もともと計画していたトポロジー保存の自己無撞着場理論の開発に関しては、計算精度の問題および非平衡ボンド配向を経路積分に取り入れるための複数の手法の候補からの選定の問題などがあり、計画よりも多少の遅れを生じているが、一方でこの手法から派生した研究テーマであるカイラルブロック共重合体に関しては、興味深い結果が得られた。これらを総合して判断すると、全体としてはおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、前年度から継続している拡張された自己無撞着場理論の問題点の解決を計ることが先決である。この問題解決のためには、粒子-連続場ハイブリッドモデルを用いた粒子シミュレーションと自己無撞着場理論の比較を行うことで、計算精度のチェックを行うことがまず必要である。次に、非平衡ボンド分布の取り入れ方についての2つの手法の比較検討を行う。 これらの問題点が解決されれば、開発・検証したプログラムを用いて大規模な系のシミュレーションを行う。具体的には、環状DNA の集合体における凝集構造を、トポロジー不変量を用いた粒子-連続場ハイブリッド法を用いてシミュレートし、環状DNA の間のトポロジー由来の斥力相互作用の詳細を議論する。この結果は、ボンド・フラクチュエ-ション法を用いたミクロなモンテカルロシミュレーションの結果と比較することで、粒子-連続場ハイブリッド法の正当性を確認する。環状高分子(DNA)の凝集体における平衡構造のシミュレーションに成功した後には、(1)環状ブロック共重合体のメルトのミクロ相分離(名大・松下祐秀教授の研究室で実際の合成が行われている)の実験との比較および(2)環状高分子の作るオリンピックゲルのようなトポロジカルなゲルの粘弾性特性のシミュレーションなどを行い、これらの系のマクロスケールの静的/動的特性を鎖トポロジーの観点から予測する方法論の構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の急速な進捗を行うために研究補助員の雇用時間数の拡大を計る。H25年度は本研究計画の最終年度となるので、各種研究集会(国内および国外)に出席し、対外的な発表を行う。発表のためのノート型PCも購入する。 なお、次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことにともない発生した未使用額であり、平成25年度請求額と合わせ、平成25年度の研究計画に使用する予定である。
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