前年度に雇用する予定であった研究補助員の雇用を行い、この研究補助員と協力して環状高分子の自己無撞着場理論の定式化とプログラムの開発を推進した。 具体的には、ます通常の高分子の自己無撞着場理論において独立変数として用いられる濃度場に加えて、個々のボンドベクトルの平均量で定義されるベクトル場およびテンソル場を導入し、環状高分子の自己無撞着場理論の定式化を行うことに成功した。さらに、この自己無撞着場理論を用いて環状高分子多体系における高分子のトポロジーをガウスの絡み合い数を利用して記述する方法も開発した。 このような理論的な定式化を元にシミュレーションを実行するために、環状高分子多体系のプログラムを開発した。ベクトル場およびテンソル場の収束性が非常に悪く、収束性向上のための方策を検討し、従来にはないベクトル場およびテンソル場の更新(自己無撞着条件を実現するための繰り返し計算)のアルゴリズムを提案するに至った。研究期間の制限のため、実際のシミュレーションで環状高分子のトポロジカルなゲル構造の粘弾性特性を求めるところまでには至らなかったが、理論的な定式化においては充分な成果が上がったと考えられる。 また、本研究で開発した方法論を用いて、絡み合い高分子のメソフェーズの粘弾性特性をシミュレートする手法も開発し、絡み合い状態にあるブロック共重合体のラメラ相の粘弾性特性の再現にも成功した。
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