本研究では、混和しない2種類の電解液を用いることで、ゲル内に液―液界面をもつ電解質を作製し、界面近傍の観察や、イオン輸送特性の評価、及び高分子アクチュエータとしての利用を試みた。 CD水酸基をメチル化したスライドリングゲルを作製し、十分に乾燥させて、同一のゲルを両側から水と疎水性イオン液体(EMI TFSI)で膨潤させることで、ゲル内部に液―液界面を有するスライドリングゲルを作製した。さらに、界面付近の成分分布を調べるため、EMI TFSIには水に難溶性の蛍光物質を加えた。このゲルの界面付近の構造を調べるために、蛍光顕微鏡を用いて、EMI TFSIの分布の様子を観察した。さらに電解質としての性能評価を行うために、交流インピーダンス法を用いてイオン伝導率の測定を行った。さらに、親水性イオン液体(EMI ES)と疎水性イオン液体(EMI TFSI)によって平衡膨潤したスライドリングゲルを作製し、それぞれを重ね合わせることでバイモルフ構造をもつゲルを作製し、直流電圧を印加した際の力学応答を測定した。 内部に液―液界面を有するスライドリングゲルの界面の様子を、蛍光顕微鏡を用いて観察したところ、EMI TFSI層に水が浸入し、EMI TFSIが液胞を形成していることが分かった。また、このゲルのイオン伝導率を測定したところ、1.3 mS/cmとなり、水とEMI TFSIの平衡膨潤ゲルの中間の値となった。EMI ESとEMI TFSI膨潤ゲルを重ね合わせたゲルに、界面と平行な電極で電圧をかけたところ、最大変位が約70μmの自励発振が見られた。これはゲル内で何らかの散逸現象が起こっていることを意味している。一方、強い電場を印加しても散逸パターンは顕れなかった。 本研究により、非相溶水/イオン液体界面を有するゲルがアクチュエータ挙動を示すことが明らかとなった。
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