聴覚システムにおいて、蝸牛管の役割は音波の検出とその周波数分解である。その構成要素は蝸牛管内の基底膜とコルチ器に埋め込まれた外有毛細胞と内有毛細胞およびこれにシナプス結合する蝸牛神経から成る。1928年以来、ベケシーの進行波モデルに基づいて議論されてきたが、現実の人の検出感度と周波数分解能を説明できていない。確率共鳴の観点から、それら構成要素の生理学的な構造を見直して各機能を推定し、人の周波数分解能と検出感度を実現し得るミニマムなモデルを構築した。これらを電気回路で構成し検証した。本研究は確率共鳴を通して、感覚器におけるノイズの積極的役割を提示すると共に、回路での実現は人工蝸牛への道を開く。
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