研究概要 |
地震波鉛直異方性とは,鉛直方向と水平方向に伝わる地震波の速さが異なる地震波異方性のことで,鉛直軸を対称軸とする結晶選択配向や,水平の互相構造が有る媒質で起こりうる.日本列島下にそのような構造が大規模にある可能性は,現代地震学の黎明期に,「ラブ波とレーリー波の矛盾」の問題として知られていたがその後深く認識されることなくそのままとなっていた.本研究では,日本列島下の鉛直異方性構造を,その存在が示唆された頃とはデータも解析手法も格段に進歩した現在の地震学を駆使し明らかにし,日本列島のマグマティズムや変形場の研究に新たな光をあてることを目指している. 本研究では,実体波走時異方性トモグラフィー,脈動ノイズを使った短周期表面波トモグラフィー,稠密アレイ解析を使った表面波トモグラフィーの三種類の異なった構造解析を統合し日本列島下の鉛直異方性構造を解明することをめざす.今年度は下記を重点的に行った. (1)実体波走時異方性トモグラフィー: 水平面内での方位異方性を解く既存の走時異方性トモグラフィーのプログラム(Ishise and Oda,2005, JGR)を改訂・高度化し,鉛直異方性構造のトモグラフィーを可能にするようにする.気象庁一元化震源やHi-net読み取りデータを使ってP 波鉛直異方性トモグラフィーの予備的解析を行った結果,パラメータ数の少ない鉛直異方性トモグラフィーの方が,方位異方性トモグラフィーにくらべて,走時残渣を効率的に減少させることが明らかとなった. (2)脈動ノイズ・表面波トモグラフィー: Nishida, Kawakatsu, and Obara (2008, JGR), Takeo他(2013, JGR査読中)の手法を高度化し,鉛直異方性・方位異方性両構造について予備的な解析を行った.2013年5月に予定されている日本地球惑星科学連合大会で発表予定である.
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