研究課題/領域番号 |
24654144
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
綿田 辰吾 東京大学, 地震研究所, 助教 (30301112)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 津波 / 太平洋東北沖地震 / 東日本大震災 / 気圧波生成 / 大気波動伝播 / 圧力波 / 大気境界波 |
研究概要 |
2011年東北沖地震では海面の隆起・沈降により大気中に圧力擾乱が発生し大気圧力波として伝搬する現象が、日本国内内外の多数の観測点で気圧波が観測され(Arai, Iwakuni, Watada, Imanishi, Murayama, Nogami. 2011)、観測点方位により異なる気圧波形は巨大地震の震源域地殻変動量分布を反映していると考えられている。 気象庁、産業総合研究所、国立天文台などの機関の2011年東北地方太平洋沖地震に伴う大気圧変動データを収集した。また、GPS津波波浪計やGPS津波計の記録を国土交通省港湾局から収集した。 大気波動圧力源を単純な点源仮定と一様伝搬速度大気し、気圧力波の最大値到着時刻から波動圧力源の位置を求めた。東北沖地震の予察的推定位置は津波の震源最大滑りに近い海溝軸直上付近に求まった。収集された気圧データは津波波形データに類似する初期水面変動に関する情報をもつことが確認できた。 現実の大気構造を模した1次元大気構造を与え、地表変動・海面変動による大気下端での圧力場と(Watada 2009)と変位速度の応答を記載する応答関数を計算手法を開発した。計算手法には、音波・重力波・大気境界波を含み統一的に大気波動場を計算できるHaskell-matrix法(Press and Harkrider 1962, Harkrider 1964)を用いているが、見かけ上の過去の研究では見かけ上の応答関数の極(応答関数無限大となる波長・周波数)が存在したが、消し去ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最初の論文が既に国際紙に掲載された。初年度には研大気波動伝播を計算コードの開発の開発を行い、データの収集を行うこととしている。計算コード開発ではすでに密度成層する大気の応答関数の計算が可能となった。東北沖地震の気圧データ、津波データの収集をほぼ終えた。また、気圧データに含まれる波動の予察的放出源の場所が、本震時に巨大津波が発生したと考えらる海溝軸付近に求まっており、収集された気圧データは津波波形データに類似する初期水面変動に関する情報をもつことが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
2011年東北沖地震発生時の大気構造を模した1次元大気構造を与え、地表変動・海面変動による大気下端での圧力場発生とと圧力波伝搬を計算する。海面変動や断層面滑りを励起源とする大気圧力変動量のグリーン関数を求め、地震学で培われた震源推定や津波波源域推定と同じインバージョン手法により海面変動量や断層滑り量分布を求めるインバージョン手法を開発する。滑り分布を求める際には、プレートの滑り方向を一定にするなどの拘束条件を与え、モデルパラメタ間の平滑化フィルタや最小二乗法推定の減衰項の影響を考慮可能な手法とする。また海底地滑りを大気波動励起源とするインバージョン手法も開発する。 既に大気波動圧力源を単純な点源仮定した場合の圧力源の位置を求めた。この予察的結果を参考にしながら、津波発生時刻、位置、初期津波変動量を推定する。さらに、得られた初期津波変動量を説明する断層モデルないし、海底地滑りモデルを構築する。Fujii and Satake 2011, Yamazaki et al. 2011 など、これまで行われている、沿岸潮位計、海圧力計、GPS波浪計による直接的な津波観測データ解析による津波波源としての断層モデルの推定手法と比較し、得られた断層モデルとの差異があれば海底地滑りの可能性を含めて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2011年東北沖巨大地震に伴う圧力変動を計算機上で再現するための高速計算機と集められた気圧データ等を蓄積するためのアーカイブ用RAID 導入する。 大気圧力波動を計算する計算機コード開発環境の購入費と、作図・データ解析用パッケージソフトの年間ライセンス料を計上する。 圧力変動は国内のみならず、日本近傍の極東ロシアや韓国などの海外を含めた数多くの地上気圧観測により測定されていると考えられる。研究分担者(今西)や気象協会に在籍する研究協力者(新井、村山、岩国、野上)と共同で、これら気圧データを収集するための経費(旅費、購入費)を計上する。 海面変動・断層滑りによる大気波動発生についての研究成果を国際誌に投稿する。その投稿料を初年度と次年度に計上している。 連携研究者・研究協力者と共に国内学会(日本地震学会・日本音響学会)と国際学会(米国地球物理学連合大会)で研究成果を発表するための旅費を計上する。
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