研究課題/領域番号 |
24654153
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
津田 敏隆 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (30115886)
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研究分担者 |
古本 淳一 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (10402934)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ウィンドプロファイラ / 水蒸気 / パッシブレーダー / 電波伝搬 / メソ数値予報モデル |
研究概要 |
レーダーの側方放射を積極的に利用し、遠方において受信することで、大気伝搬遅延の時間変動を捉えるシステムを開発に取り組んでいる。大気伝搬遅延の短期間の変動は主に水蒸気量の変動によると考えられるため、集中豪雨の原因となる水蒸気の移流や収束を捉え、豪雨の早期警戒や予測に利用可能なシステムを構築する研究を実施した。気象レーダーと固定反射体を用いた結果により屈折率の空間変動の導出に成功し、降水との対応が明らかに示した。 実際にウインドプロファイラの側方放射を受信するため、ソフトウエア・ラジオを用いた受信システム構築し、放射の受信信号から位相伝搬遅延の時間変動を導出するアルゴリズムを開発した。信楽MU観測所における試験観測を実施し、さらに、30km遠方からの側方放射を 実際に受信し位相変動を捉えることに成功した。 また、遠方に加えて近傍に受信局を設置することで、ウインドプロファイラの周波数揺らぎを除去する手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時は、ウインドプロファイラの側方放射が固定反射物により反射してくるクラッタ測定から大気情報を得ることを目指していたが、反射物同定の困難さから直達波を測定することに手法を変更した。開発の容易なソフトウェアラジオを用いたシステムを採用することで、変更に伴う研究遅延は発生せず、無事にハードウエア、ソフトウエア開発を行うことが出来た。実際遠方局からの受信実験を実施し試験データを無事に得ることにも成功した。 気象レーダーの屈折率については、IQデータから屈性率の時間変化を算出し、時間的空間的に連続的に変化していることを確認した。さらに、同じ時刻の気 象庁のメソ解析データを用いてダウンスケール予報を行い、その出力との比較から、観測とダウンスケール実験で再現した分布が、似た特徴を持っていることを確認した。 なお、本研究を推進のため、1ヶ月に1回研究打ち合わせ会議を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
実際に近傍、遠方に受信局を設置することで大気遅延量の導出に取り組む。屈折率データを同化することによって、降雨予測の精度向上について検証を行う。さらに気象庁の展開するウインドプロファイラ・ネットワークへの適用を視野に実用化に取り組む。 推定誤差に最も大きな影響を与える時計の位相雑音の除去手法については、GPS電波の伝搬遅延を利用するGPS解析手法を調査し、それによる時計誤差の最適な除去方法を調査・実装する。 なお、本手法は、ウインドプロファイラに留まらず、様々な電波源から大気屈折率情報を抽出することにも応用が可能である。このためパッシブレーダーを研究している研究者との情報共有を行い、連携を模索する。 こうした研究コミュニティーを構築することによって、ウインドプロファイラに留まらず、様々な電波源からの送信波を受信して大気遅延量測定を行ことが可能な汎用オープンソフトウェアパッケージの基本設計が出来るものと考える。 気象レーダーで観測した屈折率の時間変化について、非固定反射物からの反射等のノイズを取り除く方法を開発する。さらに、アンサンブルカルマンフィルター等の同化法を用いて、データ同化を行い、降水予報等に対するインパクトについて、初期的な結果を得る。 この手法を実用できれば、ドップラーレーダからリアルタイムに、風や水蒸気、気温の情報を得ることができ、特に夏期に発生する雷雨等の予報の精度向上に大きく寄与できると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費(研究打ち合わせ、観測、成果発表)に経費の約50%を使用する。 観測用備品、消耗品の購入に約30%、その他(出版費、謝金)に20%を支出する予定している。
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