研究課題/領域番号 |
24654155
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
鈴木 賢士 山口大学, 農学部, 准教授 (30304497)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ビデオゾンデ / 台風 / 気球 / 雲物理 / 直接観測 |
研究概要 |
24年度は、台風の暴風雨下でも放球可能な(1)ビデオゾンデセンサーの開発と(2)破裂しにくい気球の開発、ならびに(3)放球方法の検討を行った。 (1)小型ビデオゾンデセンサーの開発:既存のビデオゾンデを大幅に小型化することに成功した。これまでのビデオゾンデは全長45cm、重量約1.5kgであったが、パーツの交換、組み換えなどを積極的に行い、全長29cm、重量約0.7kgと大幅な小型軽量化を行った。この小型ビデオゾンデを用いて、平成24年7月21日には京都大学防災研究所(京都府宇治市)において降水雲への放球に成功している。この試験放球の一部は科研費基盤研究S(代表:中北英一・京都大学)として実施されたもので、本研究で当初計画していたように、他のプロジェクトへの積極的な参加によって旅費や消耗品の節約に役立っている。 (2)破裂しにくい気球の開発:強風時でも「破裂しにくい」気球の開発を行い、トーテックス株式会社に通常の1.5倍の厚みをもったゴム気球の製作を依頼した。この肉厚気球は種子島での宇宙航空研究開発機構との共同研究の際に試験放球し、十分な飛行高度、上昇速度を確認した。 (3)放球方法の検討:暴風雨時の放球作業についてはできるだけコンパクトな作業空間が望ましい。本研究ではアルミバンなどのトラックやバンをビデオゾンデ観測ステーションとして利用することを検討した。検討は平成25年3月に沖縄本島において、科研費基盤研究S(前述)で実施したラジオゾンデの放球試験に本研究のアイデアをかぶせる形で実施し、改善の余地はあるものの概ね予想通りの結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に計画されていた開発事項(小型ビデオゾンデセンサーの開発、破裂しにくい気球の開発)については、モノづくりまで行うことができ、さらに実際に試験放球まで実施することができた点について、順調に進展していると考えている。また、放球方法の検討については、可能性を追求するための現場での実際の試験放球を実施することができたことが問題点を洗い出すという点でも大きな進展であったと考えている。さらに、これらについては科研費基盤研究S(代表:中北英一・京都大学)や宇宙航空研究開発機構の受託研究の中で行うことができた点についても、他の観測プロジェクトに積極的に参加し便乗するという当初の予定どおりに実施できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は科研費基盤Sでの沖縄梅雨観測、大阪湾観測、宇宙航空研究開発機構との受託研究(種子島観測、蔵王観測)が実施される予定であり、これらに積極的に参加し、小型ビデオゾンデの性能の向上に努めるとともに、強風時の放球を考慮し、ゾンデ、気球、パラシュート、巻下器などを一体化したものを開発、試作、試験していきたい。具体的には、小型ビデオゾンデのハウジングの形状および材質を検討し、これまでの発泡スチロールからクッション性の高い材質への変更や、肉厚ゴム気球内へのパラシュート内蔵や巻下器の内蔵の検討をするとともに、他の観測プロジェクトでの試験放球を行う予定である。 また、次のステップである、本研究で開発される観測システムを使った台風観測の準備として観測サイトの下見などを、特に九州南部を中心に行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
小型ビデオゾンデの改良、試作ならびに肉厚気球とパラシュートの組み合わせのための消耗品の購入、さらにそれらを使った観測にかかわる費用(ただし他の観測プロジェクトに参加するので出費は必要最小限に抑えられる)、ならびに来年度以降の集中観測プロジェクトのための観測サイトの下見旅費に使用する予定である。 24年度研究費のうち一部を持ち越した理由は、24年度に実施した小型ビデオゾンデの試験放球の結果をうけて、さらなる試作を行うことを予定していたが、試作にあたり必要になるパーツの入手が困難なことが判明したため、代替品の検討などに時間を要すると判断し、25年度に持ち越すこととした。25年度にはその問題を解決した上で小型ビデオゾンデの試作を行う予定である。
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