研究課題/領域番号 |
24654156
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
木川田 喜一 上智大学, 理工学部, 准教授 (30286760)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 火山 / 火口湖 / 草津白根山 / 放射性セシウム / 福島第一原子力発電所事故 / 水文学的トレーサー |
研究概要 |
(1)群馬県草津白根火山の山頂火口湖の湖水に含まれる放射性セシウムならびに安定セシウムの定量技術を確立し,放射性セシウムはセシウム選択性固相抽出剤(3M Empore Cesium Rad Disk)に捕集した後にγ線スペクトロメトリで,安定セシウムは液性調整後にICP-MSでそれぞれ定量することとした.なお,Cs Rad Diskのセシウム捕集率にばらつきが生じるため,予め既知量の安定セシウムを試料水に添加しておき,ディスク通液後の回収率から試料ごとに放射性セシウムのディスクへの捕集率を算定した. (2)2012年に採取した草津白根山の3つの山頂火口湖の湖水中のセシウムを定量したところ,何れの火口湖からもCs-134とCs-137とが検出され,その放射能比から福島第一原子力発電所事故由来の放射性セシウムであることが確認できた.また同様に火口周辺の表層土壌からも同原発事故由来の放射性セシウムが見出され,当該研究を進める上での前提となる草津白根山山頂域での原発事故由来の放射性セシウムの沈着を確認した.しかしならが,湖水中濃度とディスクによる回収率の問題から当初目指していた湖水5Lからの放射性セシウムの定量は達成できず,現状では10Lの湖水試料が必要である. (3)原発事故後一年以上経た2012年の火口湖の放射性セシウム濃度および,そこから得られる沈着量の見積値は隣接する火口湖間において大きく異なっていた.これは火口湖ごとの異なる水循環ならびに水質形成システムを反映したものと考えられ,放射性セシウムを火口湖の水文学的トレーサーとして活用できる可能性が高まった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年に計画した内容については概ね予定通りに完了することができた.放射性セシウムならびに安定セシウムの定量方法をほぼ確立するに至り,実際の草津白根山の山頂湖沼試料において放射性セシウムの定量値を得ることができた.また,その結果から草津白根山山頂において福島第一原子力発電所事故由来の放射性セシウムの存在の確証を得るに至ったことは,当該研究が成立するか否かの初期要件を満たしたことを意味する.
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今後の研究の推進方策 |
(1)草津白根山山頂域での水収支・循環モデルの構築に資するため,火口湖の湖水を中心に,山頂域の各種試料における放射性セシウムの分布と時間変化に関するデータを蓄積する.放射性セシウムの水文学的トレーサーとしての活用は,単にその濃度の経年・経時変化を求めるのみでは無く,安定セシウムとの濃度比を追うことによって初めて成されるものである.そこで草津白根山の各火口湖において湖水の定期的採取を続け,溶存する放射性セシウムの濃度ならびにCs-137/Cs-133比の経時・経年変化を明らかにしていく.また,各火口湖の底質ならびに火口湖外周の土壌試料の採取を行い,その放射性セシウムの鉛直・水平分布から火口湖水に関連した間隙水の流動に係わる情報を得る.さらに,火口内外に見られる小規模湧水に含まれる放射性セシウムを定量し,火口湖水との関連について検討する. (2)一部の湖水試料のCs Rad Disk処理において,セシウム捕集率が大幅に低下する事象がが確認されており,これが試料処理量の増加,延いては作業効率と実験精度の悪化に繋がっている.この点を改善することで分析対象となり得る試料の範囲が広がるため,試料の水質・液性に応じたCs Rad Disk処理法の最適化を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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