研究課題
前年度までに引き続き2014年度を通して,群馬県草津白根火山の山頂火口湖湖水,火口底土壌,火口湖底質のそれぞれに含まれる放射性セシウム(Cs-134,Cs-137)ならびに安定セシウム(Cs-133)の定量値データの蓄積を進めた.これにより,2011年11月から2014年11月までの約3年間にわたる草津白根山山頂域の水環境中での放射性セシウム濃度の変化を明らかにすることができ,放射性セシウムをトレーサーとして,草津白根山の活動的火口湖における水循環率を推察することができた.Cs-134とCs-137との放射能濃度比から,現在の草津白根山山頂域で見いだされる放射性セシウムの主体は明らかに2011年3月の福島第一原子力発電所事故由来である.草津白根山最大の火口湖「湯釜」の湖水中の放射性セシウム濃度は,時間の経過と共に放射性核種としての物理的半減期よりも明らかに高い減少率で低下し続けている.またその減少率は2012年の春以前とそれ以降とで異なることから,放射性セシウムは沈着後1年ほどをかけて湖水と底質との間で吸着平衡に達したものと考えられる.2012年春以降,少なくとも2014年11月まで,放射性セシウムは一定の割合で減少し続けており,放射性核種としての物理的半減期を補正した場合,その湖水中での平均滞留時間は約900日と求まる.「湯釜」は活動的火口湖であり,その湖水は降水と湖面からの蒸発,湖底からの漏水に加え,湖底からの火山性流体の供給とのバランスにより保たれていると考えられることから,2012年春以降,湯釜湖水への新たな放射性セシウムの付加がなく,湖底から供給される流体に放射性セシウムが含まれていないとした場合,その平均滞留時間から,1日あたり湖水に溶存する放射性セシウムの0.1%程度が湖底からの漏水と共に系外へと失われていると考えられる.
すべて 2014
すべて 学会発表 (2件)