研究課題
本科研費での探索対象は、汽水湖の湖底から採取された堆積物コア試料中から、堆積時の湖底水中のストロンチウム同位体比を保存している成分のみを抽出する手法である。海水中と淡水中とでは溶存するストロンチウム同位体比の値が異なることから推定される、過去数千年間での高時間分解能での連続的な古塩分濃度変動復元曲線から、過去のスパイク状の塩分濃度の増加が検出できたら、それはすなわちこの地域を襲った大津波による海水の大規模な侵入を地球化学的に検出できたことになる。2009年に小川原湖中央部で採取された約20mの年縞堆積物コアから、堆積年代が5千年前以前の海成層試料(コア深度11-20m)4層準、およびその上層の汽成層の4層準について、テシエの抽出法で、1)間隙水、2)粘土イオン交換成分、3)炭酸塩成分、4)水酸化物相、5)有機物相、の5成分の抽出をおこない、クリーンルーム内でのストロンチウム単離に引き続き、ストロンチウム同位体比測定をおこなっており、現時点では4)水酸化物相が一番有望そうな結果が得られている。しかし、ストロンチウムの抽出量が一番少ない上に抽出剤中の不純物としてのストロンチウムの影響も考慮する必要があり、その再現性について検討した上で、2013年8月に開催される第四紀学会で発表予定である。同位体比以外で古塩分濃度の指標とされる、ホウ素含有量や粘土鉱物イオン交換成分中のアルカリ土類元素比についても、即発ガンマ線測定とICP発光分析で検討しており、これらの結果も併せて国際学術雑誌に投稿したい。本研究で古塩分濃度変動復元の方法論としての妥当性が確認できたら、10月に入学予定の博士課程院生の学位研究として、AD869年など歴史大津波の年に相当する層準や津波の痕跡が疑われる層準前後から、連続的にその指標となる成分を抽出して測定をおこない、津波の影響が検出できるかどうかを検証したい。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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