研究課題/領域番号 |
24654160
|
研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
岩森 光 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, プログラムディレクター (80221795)
|
研究分担者 |
中村 仁美 東京工業大学, 理工学研究科, 特任助教 (60572659)
砂村 倫成 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90360867)
|
キーワード | 岩石 / 風化 / 化学組成 / 同位体組成 / 微生物 |
研究概要 |
H25年度は、初年度に採取した試料のうち、桜島の安山岩質溶岩について、全岩化学および同位体分析(Sr,Nd,Pbの5同位体比測定)を行うと同時に、微生物群集解析を行った。桜島溶岩のうち、昭和溶岩(1946年)、大正溶岩(1914年)、安永溶岩(1779年の東部溶岩)、文明溶岩(1471年の東部溶岩、および1475~1476年の南西部溶岩)について、それぞれ 1. 新鮮で比較的緻密な溶岩部、2. 1より溶岩表面に近く、組織や色においても表面の土壌様風化部分への遷移にあたる部分(遷移部)、3. 表面の土壌用風化部、の空間的にも隣接する(およそ20cm以内)3種類の試料を採取し、分析を行った。 その結果、いずれの4つの溶岩においても、1⇒3に至るに従て、主成分や微量元素組成は、溶脱を示すと考えられる変化が認められる一方、同位体はほぼ一定もしくはごくわずかな変化を示した。また、微生物は、3では、植物やその根に関わる微生物群が卓越する一方、電流発生菌として知られるシュワネラ(Shewanella)などの嫌気性の鉄還元菌は、1のみで認められ、新鮮な溶岩中の2価鉄の存在に対応していることが示唆される。すなわち、微生物群集の特徴と、風化の度合いには関係性が存在するといえる。さらに北九州の東松浦地域から採取した平均およそ800万年前の玄武岩質溶岩については、主成分元素および微量元素組成の測定と、その中から選ばれた3試料についてのSr,Nd,Pb5同位体比測定を行った。比較的若い桜島溶岩に比べて、より大きな組成および同位体組成比変化が認められ、噴出年代が古いとより元素や同位体の風化による移動が大きいことが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた元素組成および同位体組成が、玄武岩と安山岩質溶岩について求められ、それらの相関関係をより定量的に議論できるデータがそろったといえるが、安山岩試料の同位体比分別が予想よりも小さく、採取試料の種類を増やすあるいは変更するなどの見直しが必要となったため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、花崗岩質岩石あるいは、より詳細な玄武岩質・安山岩質溶岩についてのデータを産出し、相関を独立成分分析(Independent Component Analysis)と呼ばれる多変量統計解析を用いて定量的に捉え、岩石の風化過程と微生物活動の関連性を議論する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
試料の化学・同位体分析がや遅れ気味であること、および予想よりも同位体分別が小さいことがわかり、採取試料の種類を増やすあるいは変更するなどの見直しを行う必要性が生じたため。 試料の化学・同位体分析を効率良く進めるために分析補助員を雇用すると同時に、試料の種類を増やすあるいは変更するための野外調査と試料採取を行う。また、採取試料の微生物群集解析(DNA解析を含む)を行う計画である。
|