研究課題/領域番号 |
24654162
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉谷 健一郎 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (20222052)
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研究分担者 |
淺原 良浩 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (10281065)
三村 耕一 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80262848)
竹内 誠 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80273217)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 太古代 / ピルバラクラトン / 微化石 / 炭素同位体分析 |
研究概要 |
平成24年度は既存標本の薄片作成と観察、地質調査と試料採集、そして二次イオン質量分析計を用いた個別同位体分析について予備的実験を行った。既存試料のうち微化石含有量の多いものから薄片を作成し、偏光顕微鏡で 観察した。微化石の種類と量についてデータを収集し、分析可能な標本を杉谷がチェックしたのち研究協力者である Dorothy Z. Oehler 博士、Chris House 博士に送付した。両博士がその後、カリフォルニア大学ロスアンゼルス校の二次イオン質量分析計を用いて、微化石の同位体分析を行った。西オーストラリア・ピルバラクラトンの地質調査は9月中旬に杉谷と三村が行った。当初地質学の専門家であった共同研究者竹内も参加する予定であったが、直前の怪我のため断念した。そのため調査は目標とする精度で行われたとは言い難い。一方で、微化石の標本毎の同位体分析は成功裏に終わり、フランジを持つ微化石、小型球状微化石、そしてマトリクスの不定形の有機物の良好なデータが得られた。フランジをもつものと小型のものの炭素同位体比はほぼ同じで平均-37‰であったが、マトリクス有機物粒子は-33‰であった。このことより、「微化石」が微小な有機物粒子が続成作用等で再配列してできた「偽化石」でないことを改めて立証できた。またバルクでなく微化石の個別標本の炭素同位体が特定出来たことにより、その起源を特定する上で鍵となる制約条件を得ることができた。この成果は国際誌Geologyに投稿し、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微化石の個別同位体分析の第一段階は順調に進んだが、そのデータは形態の多様性を裏付けるものではなかった。ただし、フランジをもつ微化石の中には、内部に微小な球体を多く含むものがあり、前者は多分裂直前の母細胞である可能性が申請者によって以前から指摘されていたところではある。すなわち、今回の結果はフランジをもつ微化石と小型球状微化石がそれぞれ同じ生物の生活環における異なるステージに対応する可能性を裏付けることになるかもしれない。これは、太古代微化石研究における新たな展開を示唆するものである。現地調査については共同研究者が急遽参加出来なくなったことにより満足のいく成果は得られなかったが、これまでに蓄積したデータをもとに解析を進めることができた。また酸分解により微化石を抽出することに成功したことは今後の研究の展開に大いに期待がもてるところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は岩石薄片を対象とした同位体分析ではなく、抽出した微化石を対象として炭素同位体分析を行うことを計画している。この方法は薄片を用いる場合より、形態毎に分析に十分な量の標本を集めることができるという点で優れており、かつ薄片では分析出来なかったフィルム状、大型球状微化石の分析が可能となる。この手法と薄片を対象とした局所同位体分析を組み合わせることでより良質なデータセットを得ることができると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は本研究を着想するに至ったこれまでの研究成果を総括し、かつ新たな展開を期して11月に国際会議を開催する。その国際会議に約80万円使用する。内訳としては、基調講演者(William J. Schopf教授, UCLA)と招待講演者(Dr. Bettina Schirrmeister, Bristol University)に対する旅費支援とアブストラクト印刷代金である。その他約30万円は薬品代、プラスチック器具代、学会参加費等に充てる予定である。
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