研究課題
始生代~原生代の地層に残された微生物作用の痕跡を解く鍵を求め,トラバーチンを沈殿させる温泉環境での微生物マットの研究を進めた。今年度は,大分県長湯温泉・鹿児島県妙見温泉・スマトラ島北東部のシホポロン温泉等において調査を行った。長湯温泉では,微生物マットが厚く発達する場所に焦点を当て,そこで可動性の高いフィラメント状シアノバクテリアが日周期でトラバーチン表面にマットを作ることを確認した。比較的水温が高い妙見温泉では,単細胞のシアノバクテリアが表面にバイオフィルムを作っていた。いずれの堆積場でも縞状組織は日輪であると認定できた。これらの研究成果は国際誌に公表されている。また,シホポロン温泉では50℃を境に2つのタイプの日輪トラバーチンが発達していることが認定された。50℃以下の場所ではフィラメント状のシアノバクテリアが,50℃以上の場所では非イオウ紫色細菌が表面にバイオフィルムを形成していた。後者は非酸素発生型の光合成細菌であり,地球上に酸素が乏しかった時期のストロマトライト形成のモダンアナログとして有力である。本研究では学術研究員を6ヶ月間雇用し,トラバーチンの組織観察と微生物群集解析を行った。クローンライブラリー法を用いた遺伝子解析の結果,トラバーチン環境に生息するシアノバクテリアが,高い走光性を持ち,大量の細胞外高分子物質を分泌する種によって占有されていることが分った。これは急速な鉱物沈殿に対応するための微生物の戦略であると考えられる。さらに,昨年度までの研究で認定された炭酸塩鉱物の沈殿速度と二酸化炭素の脱ガス速度の相関に関する研究を進めるために,高二酸化炭素濃度の水からの脱ガス速度を計測し,数式化を試みている。まだ,データが不十分ではあるが,二酸化炭素の脱ガスについての傾向が流速などの水文的条件に大きく依存する傾向がつかめてきた。
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