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2012 年度 実施状況報告書

火星気候史解明に向けてのサイクリックステップの実験的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24654165
研究機関大阪工業大学

研究代表者

横川 美和  大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (30240188)

研究分担者 泉 典洋  北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10260530)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード火星北極冠 / スパイラルトラフ / カタバ風 / 界面波 / サイクリックステップ / 混濁流 / アナログ実験 / 安定解析
研究概要

火星北極冠に海底谷の自然堤防上に発達するサイクリックステップ(以下,CS)と酷似する内部構造をもつステップ地形があることが知られている.本研究は,両者の形成に関するアナログ実験を行い,それを基に従来のCS形成の理論モデルを拡張し,火星北極冠の形成機構の解明に資することを目的とする.平成24年度の研究実績は以下の通りである.
海底谷上のCS形成のアナログ(実験1)として3種類の実験,(a)混濁流による侵食過程,(b)軽量粒子を用いたCSの累重,(c)勾配変化を伴う堆積過程でのベッドフォーム形成,を行った.侵食型CSを塩水密度流(混濁流のアナログ)で形成させることは出来なかった(a)が,塩水密度流による輸送型CSの形成には成功し(b,c),背景堆積のアナログとしてカオリナイトが有効な実験材料である事(b), CSのみならず様々なベッドフォームを砂床勾配の変化によって再現できる事(c)がわかった.
火星北極冠のアナログとして,実験2では,周囲気体>流体>氷という温度分布で,氷上を流れる流体によるステップ地形の形成実験を行った.今回は侵食卓越型の実験となったが,(1)フルード数が1より大きい場合にステップ地形が形成される,(2)ステップの代表波長は初期平坦床水深が深いほど長い,(3)一般にステップは下流端から形成されて上流へ発達していく,事がわかった.
理論解析は,下面から冷却される氷の上に上面から暖められる水が流れている状況(氷<流体<周囲気体)という温度分布で,水の流れを表すNavie-Stokes方程式,流れと氷の中の熱の移動を表す熱伝導方程式,流れー氷界面の移動を表す熱フラックスバランスの方程式を用いて線形安定解析を行い,界面の安定性を明らかにした.その結果,不安定領域が存在し,その領域では界面波が上流へ進行する事が明らかになった.これは,(2)の実験結果と調和的である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年度の研究計画は以下のようなものであった.
1.実験1(混濁流によるサイクリックステップのアナログ実験)で用いるアクリル水路(2台)を含む実験システムを作成し, CS形成条件を調べる実験を行う.これが順調に進んだ場合は,さらに“背景堆積”を加えて,累重条件を探る実験を行う.
2.実験2(氷上のサイクリックステップのアナログ実験)で用いるアクリル水路(2台)と氷の温度を流体より低く保つための冷媒液冷却装置を含む実験システムを作成し,実験を行う.冷媒液を取り込む水路は複雑で制作が難しいため,専門の業者に特注で依頼する.今年度は,侵食と堆積が同時に起こるセッティングで,氷上でのCS形成条件を調べる.
3.理論モデルについては,間欠的な流れ(時間的に周期的な流れ)と連続した“背景堆積”の組み込みの検討,ならびに,熱交換のCS発達モデルへの組み込みの検討を行う.
4.これらの結果の一部を12月に行われるアメリカ地球物理学連合秋季大会で発表する.
これらの計画に対し,平成24年度は「研究実績の概要」に述べたような研究結果が得られた.これらの結果は,「研究発表」にある通り,学会での発表及び論文で結果を公開している.以上のことから,平成24年度の研究はおおむね順調に進展しているといえる.

今後の研究の推進方策

平成24年度の結果を踏まえ,平成25年度は,次の事項を行う予定である.
1. これまで比較的深い海底谷でのみ観測されていた混濁流によるサイクリックステップの形成と同じ現象が,カナダ・ブリティッシュコロンビアのスコーミッシュ河口のデルタ上で観測されることがわかった.この場所は比較的水深が浅いため,観測が容易である.この現象を発見したカナダ・ニューブランズウィック大学のJohn Hughes Clarke教授と伴に現地観測を行い,平成24年度に行った実験1 (c)の結果などと比較して,混濁流によるサイクリックステップの形成条件を探る.必要に応じて,平成24年度の実験1(b)と(c)を組み合わせた追試実験を行う.
2. 実験2では,周囲大気>流体>氷の温度分布を保ちつつ,堆積優勢となる実験が行えるように装置を改良し,実験を行う.実験は北海道大学で行う.
3. 1,2の結果を踏まえて,平成24年度に作成した理論モデルを検証し,必要であれば改良を加える.また火星環境の情報と照らし合わせ,火星の気候史復元に本研究の物理モデル・理論モデルから与えられる制約条件について検討を行う.
これらの結果の一部はRCEM(国際河川沿岸環境地形形態力学シンポジウム)などで発表するほか,随時論文として公表する予定である.

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 氷上のステップ地形に関する実験的研究2013

    • 著者名/発表者名
      横川美和・泉典洋・内藤健介・山田朋人・Greve Ralf
    • 雑誌名

      土木学会論文集B1(水工学)

      巻: Vol.69 ページ: I_1129-I_1134

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 流れ-氷界面に発生する境界不安定現象2013

    • 著者名/発表者名
      泉典洋・横川美和・内藤健介
    • 雑誌名

      土木学会論文集B1(水工学)

      巻: Vol.69 ページ: I_1117-I_1122

    • 査読あり
  • [学会発表] 氷上のステップ地形に関する実験的研究2013

    • 著者名/発表者名
      横川美和・泉典洋・内藤健介・山田朋人・Greve Ralf
    • 学会等名
      第57回水工学講演会
    • 発表場所
      名城大学
    • 年月日
      2013-03-07
  • [学会発表] 流れ-氷界面に発生する境界不安定現象2013

    • 著者名/発表者名
      泉典洋・横川美和・内藤健介
    • 学会等名
      第57回水工学講演会
    • 発表場所
      名城大学
    • 年月日
      2013-03-07
  • [学会発表] Analog experiments on the formation of spiral troughs on the North Polar Ice cap of Mars : Layered deposits emplaced by cyclic steps on ice2012

    • 著者名/発表者名
      Miwa Yokokawa, Norihiro Izumi, Kensuke Naito, Hiroki Shimizu, Tomohito Yamada, and Ralf Greve
    • 学会等名
      American Geophygical Union 2012 Fall Meeting
    • 発表場所
      米国,サンフランシスコ
    • 年月日
      20121203-20121207

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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