研究実績の概要 |
本研究は金沢工業大学および国立極地研究所と協力することにより、氷床コア試料に含まれる微量火山灰の検出を目指すものである。氷床コアに含まれる火山灰層は異なる地点の氷床コア間に同時間面を提供すること、短期間の気候変化につながる大規模噴火によるものもあるので重要である。SQUIDグラジオメータによる火山灰検出に成功すれば、大陸から運ばれる風成塵、宇宙起源のコスミックダストなども検出可能となり、地球環境復元も期待できる。金沢工業大学では医療用脳磁計システムでSQUIDグラジオメータによる微弱な磁場検出を行ってきた。グラジオメータは試料直上と離れたところに2つのピックアップコイルを配置することによって磁気ノイズの影響を受けにくいというメリットがある。本年度は阿蘇火山の2014年11月以降の火山灰噴出にあわせて、2015年2月にその南方約50kmに位置する五ヶ瀬ハイランドスキー場周辺に分布する雪から直径7cm、長さ50cmのコアを3本採取して測定を行った。雪試料断面の目視確認で着色した層準が確認された。これら雪試料について超伝導岩石磁力計およびSQUIDグラジオメータで測定を行ったが、雪が融けないように液体窒素で-100℃程度まで冷却の後に10分以内に測定を行った。岩石磁力計による自然残留磁化強度は2-7x10-6 emu程度であり、伏角は50度程度であった。3本のコアのうち1本についてSQUIDグラジオメータによる測定を行ったが、自然残留磁化の測定で、表面から深さ5.5cm、28cm、および39cmにおいて-6pT, +5pT, +24pTのシグナルがZ軸ピックアップコイル(試料からの距離が最も近い)で得られた。同じ試料に25mTで等温残留磁化を着磁したところ、上記3カ所の深さにおいて-0.1nT, -0.6nT, -1.9nTの信号が得られた。これらが実際に阿蘇火山の噴火に伴う火山灰を多く含むか検討が必要である。
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