研究課題
新しい貝殻微細構造の形質を探索するために、以下の3項目の研究を行った。(1)二枚貝綱原鰓亜綱Protobranchiaにおける貝殻微細構造の比較:原鰓綱はクルミガイ上科Nuculoidea、ロウバイ上科Nuculanoidea、キビガラガイ上科Nucinelloidea、キヌタレガイ上科Solemyioideaの4上科からなる。分子系統解析によりそれらの系統関係を推定した上で、貝殻微細構造を観察し、結晶方位を測定した。それぞれの上科が固有の組み合わせの微細構造を持っており、分子系統から導かれる単系統群を特徴づける形質が確認された。ただし、化石種には現生種には無い微細構造の組み合わせを持つものがあり、今後比較検討が必要である。原鰓類に見られる真珠層は古生代に獲得された原始的な形質であり、真珠層の欠失は二次的に進化した形質であると考えられる。(2)アラゴナイト双晶の密度の比較:様々な軟体動物の貝殻のアラゴナイトの{110}双晶の密度をXRDを用いて決定し、比較した。その結果、双晶の密度は貝殻の微細構造によって大きくことなっていることが明らかになった。真珠層は腹足綱、二枚貝綱ともに双晶の密度が低い。一方、交差板構造では、双晶の密度はグループによって異なっている。TEM観察の結果から軟体動物の双晶には2つのタイプが存在することが明らかになった。(3)カサガイ類Patellogastropodaの現生種は属ごとに異なる貝殻微細構造の組み合わせを持っている。更新世、鮮新世の化石標本を用いて貝殻微細構造が化石カサガイ類の同定に有効であることを検証した。
2: おおむね順調に進展している
目標とする分類群の数、および観察した形質数から判断して、おおむね当初の計画どおりに進展している。
今後は新しい研究手法の開発を試みつつ、データ数を増やすことが重要である。
研究分担者の使用額に残額が生じたため平成26年度に物品費として使用する
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Journal of Crystal Growth
巻: in press ページ: in press
Paleontological Research
巻: 17 ページ: 69-90
The Nautilus
巻: 127 ページ: 93-100