研究実績の概要 |
腹足綱異鰓類の様々な種を比較した結果、貝殻の形状、厚さ、大きさが異なる分類群間でも微細構造には大きな差が無いことが明らかになった。主に交差板構造からなり、殻表面にわずかに均質構造が分布している。この点は多くの新生腹足類と共通であり、後生腹足類Apogastropoda全体にあてはまる特徴である。二枚貝類では原鰓亜綱に注目し、貝殻微細構造の分布を明らかにするとともに、系統的評価を通じて新規形質の探索を行った。系統関係は、ミトコンドリア遺伝子(COI, 16S)と核遺伝子(H3, 18S, 28S rDNA)の計5領域の塩基配列を用いた分子系統解析により推定した。その結果、4つある原鰓亜綱の上科 (Solemyioida, Manzanelloidea, Nuculoidea, Nuculanoidea) の単系統性は、高いブートストラップ値で支持された。貝殻微細構造の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果と系統樹と対比した結果、貝殻微細構造は上科ごとにはっきりと異なる傾向を示した。Nuculoideaは全ての種の殻の内層にシート状真珠構造があり、Solemyioideaは外層に特異な稜柱構造を持つ。また、ManzanelloideaとNuculanoideaは均質構造を有することで特徴づけられた。そしてこのような貝殻微細構造組み合わせに基づいたグルーピングと分子系統樹の結果は整合的であった。結晶方位解析からは、SEMレベルの観察では同一の構造に見えるが結晶方位が異なる微細構造があることが明らかになった。
|