• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

石灰質ノジュールを用いた泥質岩の古水温計開発

研究課題

研究課題/領域番号 24654168
研究機関金沢大学

研究代表者

長谷川 卓  金沢大学, 自然システム学系, 教授 (50272943)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード酸素同位体比 / 炭素同位体比 / 石灰質ノジュール / 白亜紀 / 蝦夷層群 / 古水温
研究概要

本年度は,別件と並行して調査・分析を行ったことなどから,旅費や消耗品費を大幅に節約することができたので,ポスドク1名をパートタイム雇用し研究を推進した.予算の一部は次年度に繰り越すことができた.
実際の研究は,大きく「野外調査」と「実験室における試料の観察および分析」の2つに分けることができる.野外調査は,8月から10月にかけてののべ10日程度を充てた.北海道の羽幌地域において行い,おもにInoceramus amakusensis帯およびInoceramus uwajimensis帯から石灰質ノジュールの採集を行った.それら試料は金沢大学に運搬後,層理と垂直および水平方向に切断し,研磨した上で目視観察,実体顕微鏡観察を行い,さらに写真撮影,スキャナーによる画像取り込みなどを行った.さらに特徴的な構造を有する部分をダイヤモンドビットを有するデンタルマシンで削り取り粉末化し,精密天秤で秤量のうえでガスベンチ直結型質量分析装置Delta Vで酸素・炭素同位体比の分析を行った.上述の分析を行うために,同装置を精度よく保つ必要があり,またその精度がどの程度なのかを確認する必要に迫られた.そこで数か月をかけてこれを実践した上で分析を行った.この過程で装置保守上の重要なデータを得ることができた.ガスベンチを用いた酸素・炭素同位体比分析システムは,日本ではこれまであまり多くは普及していなかったが,安価で高い精度が得られることが評価され,急速に普及が進んでいる.しかし保守や精度などに関する情報が乏しかった.本研究で得られたデータは後藤ほか(2012)やMoriya et al. (2012)として公表されたが,今後同装置を用いて古環境解析を進める研究室の資料として大きく貢献するものと期待される.
また本研究に密接に関連して,3篇の国際論文を公表することができた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度に予定していた内容はほぼ達成できた.分析装置の状態の保ち方などの基礎情報が手に入った.来年度にはさらなる進展が期待できる.

今後の研究の推進方策

本年度,野外調査を通じてさらに多様なノジュールの採集に努める.北海道のほかに,カナダ太平洋岸のバンクーバー島周辺およびクイーンシャーロット島でも類似した堆積環境で形成されたノジュールの産出が知られているため,これらの地域でも試料採集を行う.同時に,今年度採集の試料の観察,記載,分析を精力的に進めていく.さらに北海道の中川町立エコミュージアムや三笠市立博物館などの地域博物館等に依頼し,それらの施設から大型脊椎動物に付随して形成されたノジュールの供与を受け,分析を進める予定である.また,ニュージーランドで得られた魚竜化石のノジュールも分析に用いる.この試料の採集場所は当時南緯70度という高緯度であったため,水温推定ができれば重要な意味がある.以上の分析は,12月までに終了させ,データ整理は1月から3月までをかけて行い,成果としてまとめる予定である.

次年度の研究費の使用計画

もっとも大きな部分を占めるものは,分析装置の消耗品である.ヘリウム価格の高騰が分析個数に影響することが懸念されたが,来年度に一部の予算を使繰り越すことができたため,この問題は解消できる.ポスドクのパートタイム雇用,アルバイト学生への依頼を通じて精力的にデータを出していく.また野外調査にも一定の予算が必要である.特に,カナダでの試料採集の際に,レンタカーや宿泊施設などの借用のために一定の資金が必要となる.またカナダ協力者への謝金も必要になる可能性あり.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Stable carbon and oxygen isotope analyses of carbonate using a continuous flow isotope ratio mass spectrometry2013

    • 著者名/発表者名
      Moriya, K., Goto, A. and Hasegawa, T.
    • 雑誌名

      Science Report of Kanazawa University

      巻: 56 ページ: 45-58

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Strontium and carbon isotope stratigraphy of the Late Jurassic shallow marine limestone in western Palaeo-Pacific, northwest Borneo.2013

    • 著者名/発表者名
      1.Kakizaki,Y., Weissert,H. J., Hasegawa, T., Ishikawa, T., Matsuoka, J. and Kano, A.
    • 雑誌名

      Journal of Asian Earth Sciences

      巻: TBD ページ: TBD

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Carbon isotope stratigraphy and depositional oxia through Cenomanian/Turonian boundary sequences (Upper Cretaceous) in New Zealand.2013

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa, T., Crampton, J., Schiøler, P., Field, B., Fukushi, and K. Kakizaki, Y.,
    • 雑誌名

      Cretaceous Research

      巻: 40 ページ: 61-80

    • DOI

      doi:10.1016/j.cretres.2012.05.008

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ガスベンチ/安定同位体比質量分析計を用いた連続フローシステムによる炭酸塩の炭素,酸素安定同位体比測定-条件設定に向けての検討―2012

    • 著者名/発表者名
      後藤(桜井)晶子,沖野 遼,長谷川 卓
    • 雑誌名

      福井県立恐竜博物館紀要

      巻: 11 ページ: 49-55

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Strontium isotopic ages of the Torinosu-type limestones (latest Jurassic to earliest Cretaceous, Japan): implication for biocalcification event in northwestern Palaeo-Pacific.2012

    • 著者名/発表者名
      Kakizaki, Y., Ishikawa, T., Nagaishi, K., Tanimizu, M., Hasegawa, T. and Kano, A.
    • 雑誌名

      Journal of Asian Earth Sciences

      巻: 46 ページ: 140-149

    • DOI

      doi.org/10.1016/j.jseaes.2011.11.018

    • 査読あり
  • [学会発表] モンゴルの中部白亜系湖成層の有機物組成の変動と炭素 同位体比層序: OAE1a–1b期における陸域気候変動復元に向けて

    • 著者名/発表者名
      長谷川 卓ほか
    • 学会等名
      日本地球惑星連合2012年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉県)
  • [備考] 金沢大学地球環境進化学研究室 長谷川卓研究室

    • URL

      http://earth.s.kanazawa-u.ac.jp/Paleo_Lab/index.html

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi