研究課題
北海道の白亜系蝦夷層群と,カナダ国BC州ホーンビー島の地質調査を行い,現地研究者Jim Haggart博士と共同研究を進めた.ノジュール試料を100個以上採集した.それらの産状,保存状態等について現地で詳細な記載を行った.実験室に持ち帰り,切断・研磨を行い,画像取り込みを行うと同時にスケッチを行って記載し,色,含有化石等について詳細な分類を行った.それらの酸素・炭素同位体比を,金沢大学設置の質量分析装置にて分析した結果,幅広い値の分布が見られたが,いくつかのノジュールは,予期された海底水温に一致した.記載状況を確認し,「明らかに海水温を反映しない試料」を調査中に認識できるようになった.ノジュールは1個当たり重量が大きく,運搬する数に制限があるため,調査効率が格段に高まった.切断面の観察からも「海水温情報を保持している可能性が高い試料」の選別が可能になった.以上,埋没深度等の他の問題がない限り,分析前に評価対象としうる試料を高確率で抽出できるようになった.上述のスクリーニングを通過するノジュールを20個程度分析し,その中で最も高い値の酸素同位体比から「推定海水温」を求めれば,海底古水温を推定できることが明らかになった.化石を用いた方法では前処理を含めて大きな労力を要するが,本手法は,測定回数は多くなるものの,取り扱いが簡単であり,簡易な古水温計として普及するだろう.今後の課題として個別ノジュールが確実に古水温推定に使えるのかどうか,を判断する手法の構築があげられる.硫黄同位体比を用いる手法を検討したが,装置の故障により残念ながら研究期間中に達成することができなかった.明瞭な方向性を打ち出すことができたのは本研究の成果といえる.以上の結果は,金沢大学卒論と修論として総括されたが,2014年の地球惑星連合大会で発表する.硫黄同位体比の分析結果が出た時点で論文公表をする予定だ.
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