研究実績の概要 |
圧力80万気圧までの中央海嶺玄武岩組成を有するガラスおよび(Mg,Fe)SiO3組成を有するガラスの近赤外ー可視領域における光吸収測定に成功し、両組成ともに各圧力条件における吸光度を決定し、圧力の増加とともに光の吸収が劇的に減少することを発見した。この現象のメカニズムを明らかにするために、大型放射光施設SPring-8のBL11XUの放射光メスバウアー測定装置を用いて、57Feを含有する(Mg,Fe)SiO3組成を有するガラスの測定を圧力85万気圧まで行い、圧力の増加とともに鉄原子の周囲の電子状態が徐々に変化することを明らかにした。本結果から、核マントル境界付近でのケイ酸塩メルトの有する放射熱伝導率を見積もったところ、周囲を取り囲む下部マントル構成鉱物が有する放射熱伝導率に比較して5~25倍ほども放射熱伝導率が低いことが明らかになった。このことは、核マントル境界にわずかに存在するとされるケイ酸塩メルトが核マントル境界での熱輸送構造に著しい不均質をもたらすもので、地震波超低速度層からの巨大マントル上昇流の発生のトリガーとなりうるものであることを示した。
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