研究課題/領域番号 |
24654172
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
奥野 正幸 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (40183032)
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キーワード | シリカゲル / グリシン / プレス圧縮 / 衝撃圧縮 / 構造変化 / X線回折法 / ラマン分光法 / 赤外分光法 |
研究概要 |
平成25年度は、引き続きアミノ酸ーシリカゲル複合体の合成実験とその衝撃圧縮実験を実施するとともに、プレスで圧縮した、シリカゲルの分析を行い、その変化とアミノ酸の安定性について、以下のような成果を得た。 1)マルチアンビルプレスを用いて、合成したシリカゲルを2GPa, 100℃で1時間圧縮した。回収した圧縮試料について、粉末X線回折測定、赤外吸収測定、ラマン分光測定を実施し、得られた結果からその構造変化を調べた。まず、ラマンスペクトルは、試料の部分によっていくつかの異なるスペクトルが得られた。解析の結果、圧縮試料には、シリカゲルの構造に近い部分、石英に結晶化した部分、及び石英とシリカゲルの中間的な構造を持つ部分があることを明らかにした。これらの結果は、試料中の水分子やシラノール基の分布は一様ではなく、含水率が高い部分で結晶化が促進されたことを示している。また、X線回折測定及び赤外吸収測定の結果からは、シリカゲルのネットワーク中のSi-O結合の切断や非架橋酸素の増加がおきた可能性が示唆された。これらのことから、沈み込み帯において非晶質シリカの構造変化や結晶化がおこっている可能性があると考えた。 2)グリシン結晶及び合成したシリカゲルーアミノ酸(グリシン)複合体について、6、8、18、30GPaの衝撃圧力での圧縮を行い得られた試料について、X線回折測定、ラマン及び赤外分光測定などを実施した。得られた結果から、グリシン結晶はγ型からα型の構造へ変化することを明らかにし、この構造変化が衝撃圧縮時の熱の影響によるものであると結論づけた。また、シリカゲルーアミノ酸(グリシン)複合体については、昨年度実施した L型セリンの結果と同様に、グリシンも18GPaでの圧縮後も存在することを明らかにした。 3)平成24年度に実施した研究成果を、国際学会等で発表するとともに、国際学術雑誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の本研究課題については、以下のような理由から、研究計画の変更があったものの概ね順調に進展していると判断した。 1)シリカゲルの静水圧縮実験から、水分子やシラノール基が存在する条件では、シリカゲルの構造変化が促進されることを明らかにした。この結果は、国際会議及び国内学会で発表した。 2)新たに合成した、グリシンーシリカゲル複合体について、衝撃圧縮実験をし、衝撃圧縮下でもグリシンが安定に存在することを明らかにした。この結果は、従来の探査機による彗星探査の結果を裏付けた新しい結果といえる。 3)平成24年度に実施した、シリカゲルの静水圧縮実験の結果は、今年度、国際学術雑誌で発表している。 4)交付申請時の計画では、D型セリンのアミノ酸についての衝撃圧縮実験等を実施する予定であった。実験装置の利用に余裕がなかったことから実施できなかったが、上記の成果をそれらを補う成果であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請時に計画した、平成25年度の研究計画の一部は実施できなかったことから、平成26年度の研究計画にそれらを再度含めることとする。特にD型アミノ酸についての研究は重要だと位置づけられる。そのために、必要な衝撃圧縮実験は、他機関の研究者との連携が必要であるが、そのための共同研究についての準備はすでに完了している。以上のように研究計画の一部変更が必要であるが、学会発表や論文発表が予定以上に順調であることから、平成26年度の本研究課題の遂行には支障がないと判断している。
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