研究課題/領域番号 |
24654173
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長谷部 徳子 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (60272944)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射年代測定 |
研究概要 |
本年度の取組みの概要 試料の調整法の吟味及び実戦的なFT年代決定に取り組んだ。試料の調整法やFTの認定については本申請の採択前に先行して行い,その内容を投稿したものが本年度中に受理となった。その内容をさらに改良する実験観察を行った。その過程でFTとは異なる構造を見つけた。来年度以降,この構造がαトラックである可能性について更なる吟味をする予定である。 本年度の取組み詳細 研磨方法;AFMの観察では表面が平滑であることが重要である。公表済みの先行実験では,研磨材として0.125μmのダイヤモンドペーストを利用したが,新たに通常FT法では利用されていない0.02~0.06μmのコロイダルシリカの利用を試みた。その結果,コロイダルシリカによる研磨はダイヤモンドペーストによる研磨傷を目立たなくする効果があり,有効であることが示された。 年代測定:提案する試料準備法に従い,実践試料の年代決定を試みた。段階的にエッチングした試料を観察した結果,通常の光学顕微鏡下での観察同様に,ある程度エッチングしないとFTが全て観察できない漸移帯があることがわかった。かつ,AFMではFT密度が高い試料で利用することを前提としているが,そのような試料ではAFMの高解像でもトラックの観察面での連結がみられた。そこである程度段階エッチングをして観察FT数の補正をすることが望ましいと思われる.補正の結果,年代値は,トラック密度の低い粒子のみ選択して通常法で求めた既報とよく一致した。またAFMによる年代値はトラックの計測数を増やせるため,誤差の小さい値を提供できると言う利点があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は試料の選定と鉱物分離によるジルコンの抽出,および標準試料を用いた試料の調整法の吟味,AFM 観察結果の数値化,及び観察手法の手順の確定を予定していた。試料調整法としては特に研磨条件,エッチングの有無,マウント剤の検証について吟味する予定であった。これらについて予定通りに吟味を行い,それに基づいた試料の調整法を施した上で実際に年代測定を試行することができた。 現状ではエッチングを行う調整法をとっており,問題なく年代決定を行うことができるが,さらに一歩踏み込んで,エッチングを行わない場合の観察手法の手順確定をすすめる必要があるため,おおむね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
FT年代測定の実践化,および表面構造のうち未知の構造がαリコイルトラックである可能性についての吟味をすすめる。 αリコイルトラック:高解像度で表面観察を行った際に,FTとは明らかに違う,くぼみを観察できた。このくぼみはFTより数が多く,αリコイルトラックの可能性がある。その正体を見極めるために以下の実験をおこなう。まず若い試料で観察を行う。αトラックであれば,若い試料ではその数が少ないかほとんど観察できないはずである。古い試料との比較からそのくぼみがαリコイルトラックである可能性を調べることができる。またαリコイルトラックであれば,試料を高温にさらすと,アニーリングを受けると思われる。同じ試料でアニーリングしたものとそうでないものを用意し,観察・比較を行う。 FT年代測定:いくつかの未知試料の分析に応用する。試料としては、これまで別途共同研究等で取組んでいた実績のある地域で,ジルコンFT 年代値を得るのが難しかったものとして,南極大陸から採取した試料で試みる。この試料ではアパタイトのFT年代を行ったところ,古生代であったため,ジルコンの年代はそれより古いはずである。新たにジルコンのFT 年代を新手法で出すことによって,得られる新知見に期待できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研磨用品,薬品,実験器具などの試料調整用消耗品,および観察にかかるカンチレバーなどの消耗品の購入に使用する.また研磨・AFMによる観察など実験に時間がかかる分については実験補助者を依頼し,謝金を支払う。研究成果をフィッショントラック研究会で公表するために旅費を使用する。
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