研究課題
本年度の取組みの概要昨年度,年代が約250Maの試料の年代決定にAFMを利用して,実験手順を確立できたので,今年はさらに年代が500Maくらいである事が期待されるジルコンを対象にした実戦的なFT年代決定に取り組んだ。そのためにエッチング時間を1時間未満に短縮して観察を行った。しかしながら,エッチング時間が短いと,FTとは異なる構造との差別化をはかる事が難しい事が明らかになった。この事はAFMを使用するFT年代測定にも,年代可能試料の上限がある事を示している。今後、エッチング作業の見直しや,トラック認定クライテリアの見直しを進める必要がある。またFTとは異なる構造がαトラックである可能性について吟味を行うために,現世の火山から分離したジルコンのAFM観察を行った。その結果古いジルコンで観察される表面構造がなかったため,αリコイルトラックがこのような構造の原因であると思われる。また古いジルコンに600度,1000度でアニーリングを施して観察したところ,FTだけでなく,表面構造にも変化が見られた。この事からαリコイルトラック由来と思われる構造の熱に対する挙動はFTと似ている事が示唆された。新しいジルコンの観察では,まれに10nm深さの計数可能な凹が見つけられた。試料の由来を考えるにこのような凹がFTと考える事は難しいため,αリコイルトラックである可能性がある。この凹は計数が可能であるため,若い火山岩由来のジルコンであれば,αリコイルトラック年代測定を確立できるかもしれない。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は前年度の結果を受けて古い年代である事が期待できる未知試料の年代決定に取り組み,実験方法などをさらに改良する予定であった。予定通りに取組み,方法の問題点を明らかにする事ができた。さらにαリコイルトラックに関して,次年度以降および,追加のプロジェクトの提案によって実施する予定であった,αリコイルトラックの振る舞いを明らかにするための一端となるアニーリング実験を行った。従って,当初の計画以上にすすんだと判断した。
αリコイルトラックによる年代決定が可能であるかどうかの吟味をさらにすすめる。そのためには,適切なαリコイルトラック数が見込まれ,かつ,履歴が複雑ではない,若い火山岩を利用して,観察、年代決定を行う。また今年度の実験で明らかになった,FT年代測定にAFMを利用する場合の古い方の上限を撤廃,もしくはのばすために,エッチングプロセスやFTの認定プロセスについての吟味をすすめる。
フィッショントラック研究会の参加費を計上していたが,今年はルミネッセンス年代測定研究会およびESR応用計測研究会との合同開催となったため,それらの研究会に参加するために確保してあった別予算を利用して参加する事ができた。そこで平成26年度に開催される国際熱年代学会議出席に費用がかかる事を見越して,次年度使用に処すこととした。また実験補助を依頼して謝金を支払う予定でいたが,卒業研究の一端として実験補助を行ってくれる学生がいたため,次年度の実験補助費として使用を延期する事とした。研磨用品,薬品,実験器具などの試料調整用消耗品,および観察にかかるカンチレバーなどの消耗品の購入に使用する.また研磨・AFMによる観察など実験に時間がかかる分については実験補助者を依頼し,謝金を支払う。研究成果を国際熱年代学会議および国内のフィッショントラック研究会にて公表するために旅費を使用する。
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Island Arc
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号外地球 第四紀研究における高精度年代測定法の新展開:最近10年間の進展
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フィッション・トラック ニュースレター
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