研究課題/領域番号 |
24654174
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 丈典 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 准教授 (90293688)
|
キーワード | CHIME年代測定 / EPMA / エックス線発光スペクトル / 結晶構造 / 岩石・鉱物・鉱床化学 / 国際研究者交流(大韓民国) / 国際情報交換(インド共和国) |
研究概要 |
平成25年度は平成24年度の結果をもとにスペクトルを取得する波長の範囲を限定し、結晶構造の変化を確実にとらえることを目標に実験を行った。花崗岩及び変成岩から分離したジルコンのX線スペクトルを、名古屋大学年代測定総合研究センターの日本電子株式会社製JCXA-733(ローランド円の半径140mm)及び韓國地質資源研究院の協力のもとで釜山国立大学のカメカ社製SX-100(ローランド円の半径160mm)を用いて取得した。使用した分光結晶は、JCXA-733ではPETで、SX-100ではTAPである。加速電圧は15kVとした。分析に先立ち、JCXA-733の劣化した部品を交換するとともに、変動をさらに小さくするため電子回路の見直しを行った。 スペクトルを解析したところ、ジルコン中のSiのX-ray RamanはHfの特性X線の妨害により実用的な精度で測定することが困難であることが明らかになった。他の発光スペクトルについても微量元素の存在可能性を考慮しながら精査した。その結果、他の元素の妨害を受けず、Siの状態分析が可能な領域が存在することが明らかになった。 本研究課題は、当初はEPMAを用いたCHIME年代測定の高精度化のみを目的にしていたが、Kusiak et al. (2013)により同位体年代でも同様の問題があることが指摘され、本研究課題の成果が同位体年代の高精度化にも応用可能である可能性が明らかになった。そこで、研究代表者が中心となり、他大学と合同で研究集会を開催した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は分析装置のメーカーに依存せず、かつ、現実的な測定時間で結晶構造の変化をとらえることが可能である条件を明らかにすることが平成25年度の主たる目的であった。 実験の結果、X線の干渉を受けずに状態分析可能なスペクトルを取得することが可能であることが明らかになり、本研究課題を遂行する上で重要な知見が得られた。そして、結晶構造の状態の変化と考えられるスペクトル形状の検出に成功した。また、分析装置の安定性についても平成24年度より向上している。 以上のことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き日本電子株式会社製EPMAとカメカ社製EPMAを用いてX線発光スペクトルを取得し、CHIME年代測定に用いる鉱物の状態分析を行う。その際、SHRIMPやLA-ICP-MSなど同位体年代測定で異常な結果が出ている試料を用いることにより、これまでに得られたスペクトルの違いがEPMAを用いた状態分析が異常な年代を示す部分の指標となるか検証する。また、EPMAだけでなく、ラマン分光分析も応用可能であるか検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
カメカ社製EPMAでPETを用いてSi及びPのX線発光スペクトルの精密測定を行うには「extended」タイプの分光器が必要で、使用できない場合はTAPで行わなければならない。今年度までの測定で、カメカ社製EPMAでTAPを用いてもX線発光スペクトルの測定は可能であることが明らかになったが、日本電子株式会社製EPMAでPETを用いた場合と同等の分解能で測定可能かどうかはさらなる実験が必要である。そのため、次年度もカメカ社製EPMAを用いた実験が必要である。また、同位体年代が測定済みの試料の測定を行う必要がある。以上のため、次年度も大韓民国で測定する必要があり、外国旅費を確保することとした。 また、本研究課題のためEPMAを使用していたところ、25年度末にEPMAの不具合が生じた。研究課題遂行には保守が必要であるが、名古屋大学の会計処理の締め切りを過ぎていたため26年度に実施することとした。 次年度使用額は主に大韓民国への外国旅費として使用するとともに、25年度に投稿した論文の掲載料にも使用する。また、25年度末に発生したEPMAの不具合の保守にも用いる。 また、装置の安定性を向上させると測定精度が向上することが見込まれるため、さらなる改造により一層の安定化を図る。
|