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2012 年度 実施状況報告書

鉱物中水素原子の直接観察

研究課題

研究課題/領域番号 24654175
研究機関京都大学

研究代表者

三宅 亮  京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10324609)

研究分担者 藤 昇一  九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20380595)
福永 啓一  一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 研究員 (10303702)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード電子顕微鏡 / 原子像 / 造岩鉱物
研究概要

本研究では、最新の収差補正機能付き走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて、「鉱物中の“水素原子”」を直接観察を目指している。さらに、そこで、集束イオンビーム装置(FIB)を用いたSTEM試料作製法の開発および作製した試料を用いて水素原子の直接観察を試みることを目的としている。
まず、FIBによる加工条件を様々に変化させて、造岩鉱物の原子像を取得するために適した加工条件を得た。こうして得られた条件にて、フォルステライト(Mg2SiO4)、オリビン((Mg,Fe)2SiO4)、α-コランダム(Al2O3)、Norbergite(Mg3SiO4(OH,F)2)やカルサイト(CaCO3)についてSTEM/TEM試料の作製をおこない、STEM/TEM観察を行った。その結果、フォルステライト(Mg2SiO4)やα-コランダム(Al2O3)について、HAADF-STEMにおいては、Mg原子カラム、およびSiとO原子が並んだカラム、Al原子カラムを、ABF-STEMにおいては、HAADF-STEM像に加えて、O原子カラムも得た。本研究において、HAADF-STEMにおいて酸素原子カラムを観察することはできなかった。得られたSTEM像からコントラスト強度と原子番号の関係を調べた。この結果は、計算機シミュレーション(HREM社xHREM-STEM拡張機能)を用いた結果とも良い一致を示している。通常のSTEM-HAADF像では得られない酸素原子像を得るなど、研究は順調にきている。一方、Norbergite(Mg3SiO4(OH,F)2)やカルサイト(CaCO3)についても観察を行ったが、STEM/TEMによる試料ダメージにより、像の取得が困難であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、最新の収差補正機能付き走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて、「鉱物中の“水素原子”」の直接観察を目指している。さらに、我々岩石・鉱物の透過型電子顕微鏡(TEM)観察する上では、粉末試料ではなく薄片から集束イオンビーム装置(FIB)などでTEM試料を作成するのが、一般的である。そこで、FIBを用いたSTEM試料作製法の開発および作製した試料を用いて水素原子の直接観察を試みることを目的としている。
平成24年度は、九州大学超高圧電子顕微鏡室にある収差補正機能付きSTEM/TEM(JEOL社製JEM-ARM200F)の使用を当初予定し、またVH2を用いた予備実験を行うことを予定していたが、諸事情によりファインセラミックスセンター(JFCC)の福永啓一博士に新たに研究分担者になっていただき、JFCCにあるSTEM/TEM(JEM-2400FCS)を使用し、研究を前倒しして鉱物について観察を行った。
その結果、フォルステライト(Mg2SiO4)やα-コランダム(Al2O3)について、酸素原子を含めてその原子像を得ることに成功した。この結果は、計算機シミュレーション(HREM社製ソフト xHREM+STEM拡張機能)を用いた結果とも良い一致を示している。通常のSTEM-HAADF像では得られない酸素原子といった軽元素の原子像を得るなど、研究は順調にきている。一方、Norbergite(Mg3SiO4(OH,F)2)やカルサイト(CaCO3)についても観察を行ったが、STEM/TEMによる試料ダメージにより、像の取得が困難であった。
また、これらの試料はFIBを用いて作製したものであり、STEM/TEM試料作製法については、STEM/TEMによる原子像を十分取得できたことから、十分の成果が得られている。

今後の研究の推進方策

平成24年度にNorbergite(Mg3SiO4(OH,F)2)やカルサイト(CaCO3)についても観察を行ったが、STEM/TEMによる試料ダメージにより、像の取得が困難であった。この試料ダメージの低減が今年度の最大の課題である。そこで、平成24年度同様JFCCが所有するSTEM/TEM(JEM-2400FCS)に液体窒素により試料付近を冷却する冷却ホルダを用いることにより、試料ダメージの低減を図る予定である。
当初の予定では、平成25年度にFIBによるダメージ層の軽減法の開発および改良として、従来あるArイオンビーム装置を改良し、ダメージ層の低減を試みる予定であった。しかし、平成24年度にFIBによる試料作製法を検討した結果、酸素原子を含めた原子像の取得に成功した。また、用いる予定であったArイオンビーム装置が使用不能となり廃棄処分となった。そのため、試料作製法については、現在の手法で十分であると思われるが必要に応じてFIB試料作製を改良することとする。

次年度の研究費の使用計画

今年度は、研究実施や打ち合わせ、学会発表のための旅費およびTEM、FIBの装置の消耗品代と計算機シミュレーションを行うためのパソコンの購入を予定している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] First find of ferropseudobrookite in quartz from Napier Complex, East Antarctica2013

    • 著者名/発表者名
      Akira Miyake, & Tomokazu Hokada
    • 雑誌名

      Eurpean Journal Mineralogy

      巻: 25 ページ: 33-38

    • DOI

      10.1127/0935-1221/2013/0025-2256

  • [雑誌論文] Isochemical breakdown of garnet in orogenic garnet peridotite and its implication to reaction kinetics2013

    • 著者名/発表者名
      Masaaki Obata, Kazuhito Ozawa, Kosuke Naemura & Akira Miyake
    • 雑誌名

      Mineralogy and Petrology

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1007/s00710-012-0260-4

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Behavior of zircon in the upper-amphibolite to granulite facies schist-migmatite transition, Ryoke metamorphic belt, SW Japan: Constraints from the melt inclusions in zircon2013

    • 著者名/発表者名
      Kawakami, T., Yamaguchi, I., Miyake, A., Shibata, T., Maki, K., Yokoyama, T. D. & Hirata, T.
    • 雑誌名

      Contributions to Mineralogy and Petrology

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1007/s00410-012-0824-7

    • 査読あり
  • [学会発表] Cs 補正走査透過電子顕微鏡による造岩鉱物の原子像観察2013

    • 著者名/発表者名
      三宅亮・藤昇一・福永啓一
    • 学会等名
      日本顕微鏡学会第69回学術講演会
    • 発表場所
      ホテル阪急エキスポパーク(大阪)
    • 年月日
      20130520-20130522
  • [学会発表] Cs補正走査透過電子顕微鏡による造岩鉱物の原子像観察2013

    • 著者名/発表者名
      三宅亮・藤昇一・福永啓一
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2013年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉)
    • 年月日
      20130519-20130524

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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