研究課題
本研究では貧栄養域である熱帯域において栄養塩の動態を評価・復元する直接的な指標を確立するため、年輪を刻みながら成長する造礁性サンゴの骨格に微量に含まれる有機物の窒素同位体比が海水の硝酸の濃度と起源を記録していることに着目した。これまで困難であった異なる栄養塩濃度で飼育された幼生骨格の分析を可能にし、サンゴ骨格の窒素同位体比の定量的な指標の確立を目指した。これまで造礁性サンゴ骨格の様々な環境指標のキャリブレーションは大型水槽を用いた成体サンゴの飼育によって行われてきた。成体サンゴは天然から採取した後、飼育環境に慣れ、天然と同じように骨格を形成するまで3年ほどの期間を要すると言われている。幼サンゴは大型水槽を必要とせず、閉鎖系で飼育するため添加物質の影響をそのまま反映する。本研究では、琉球大学瀬底研究施設において、造礁性サンゴから採卵し、受精させて得られた幼生サンゴの飼育技術を完成させた。飼育にはミドリイシ属サンゴを用いた。石灰化前のプラヌラ幼生に褐虫藻を感染させたものとさせないものを用意し、褐虫藻の有無による窒素代謝の違いを明らかにすることが可能になった。トレーサーを幼生に与えるため、人工海水に窒素同位体比既知の窒素化合物(①粒状有機態窒素(アミノ酸)②15N硝酸 ③大気窒素ガス(何も添加しない)を添加し、幼生を飼育するシャーレの中に満たした。飼育条件を変えたプラヌラ幼生が各シャーレの中で定着し初期骨格を形成するまで二週間以上観察した。その際、ミドリイシ属には、これまでの研究で有効性が確認されている変態誘因物質を用いて定着石灰化を促した。その後、得られた初期石灰化骨格の褐虫藻の有無により石灰化量、骨格構造が異なることが確認された。
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PLoS ONE
巻: 9(2) ページ: e88790
10.1371/journal.pone.0088790
Geochemistry Geophysics Geosystems
10.1002/ggge.20195