研究課題/領域番号 |
24654180
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平野 直人 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (00451831)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 火山 / 地震 / プレート / 海洋調査 / 年代測定 / 海底地形 |
研究概要 |
本年度は、2012年1~3月に行われた独立行政法人海洋研究開発機構の調査船「みらい」によるMR11-08航海で取得された海底音響データの整理と解析を行い、東北地方太平洋沖地震後の火山や新しく流出した溶岩や、変動地形の探索を進めた。現在引き続き作業を進めている。 さらに火山活動の頻度や分布を明らかにするために、取得済み玄武岩溶岩試料の年代測定も行った。玄武岩試料の年代測定は、一般的にはK-Ar年代測定法やAr-Ar年代測定法が用いられるが、本岩石試料は、噴出時の海水急冷により溶岩中のAr同位体比が海水(=大気)のAr同位体組成と平衡に達しないうちに冷え固まってしまい、測定同位体比が噴出年代を示さない例(過剰Ar:McDougall & Harrison, 1988)や、急冷に伴う非晶質ガラスの形成が試料の中性子照射を行う際にAr-Ar年代測定の妨げになる(Iwata & Kaneoka, 2000; Koppers et al., 2000)例があったからである。Ar-Ar年代測定は東京大学地殻化学実験施設、東京大学アイソトープ総合センター、東北大学金属材料研究所と共同研究として行った。 これらの噴出年代を決定するために、株式会社京都フィッショントラックとの共同研究として、岩石試料中のジルコンおよびアパタイトの両鉱物粒子の抽出を試み、U-Pb年代測定法およびフィッショントラック年代測定法の適用を試みた。溶岩試料からは得られたこれら鉱物量は、火山の場所により異なるがある程度得られた。今後は更に京都大学理学部との共同研究により、レーザー導入型ICP-MS分析のよって年代測定分析を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2011年度末の航海で得られた海底音響データは、天候不順のため研究海域重点型のデータが得られなかったものの、北緯10度以北の太平洋プレート上の調査航跡に沿った周囲の海域からのデータを入手できた。それらデータの解析を進めている。また、東北地方太平洋沖地震前の海底データは、北緯30~40度のものしか手元に無いため、それら以南のデータを入手する必要もある。 既存の岩石試料の年代測定は既述のとおりAr-Ar年代測定で成果に効果的な結果が残念ながら得られなかったため、溶岩中に含まれるジルコンおよびアパタイト鉱物粒子を用いたU-Pb年代測定法という別の手法による年代測定を進めている。多量の試料の処理によって、目的の鉱物が分離し得られたため、それらの分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
入手された海底音響データの解析による海底火山の探査を引き続き行い、海底音響調査による反射強度地図および海底地形図を作成する。そのご、Hirano et al. (2008)に基づいた手法により、火山や溶岩流の存在する可能性が高い海底を特定し、東北地方太平洋沖地震前の同海域データと比較する。既述のように同地震前のデータは北緯10度~30度の海域のものを新たに入手する必要がある。さらに、同海域で2011年以降得られた他の調査航海による海底音響データの入手を試みる。 溶岩試料から分離された鉱物粒子の精密な年代測定分析を行う。京都フィッショントラックとの共同研究によって、プチスポット火山の噴出物(溶岩)およびそれら噴火の際に焼かれた深海泥(ペペライト)試料からジルコン、アパタイト粒子が得られた。これらは三陸沖の試料中に多量に存在し、海底火山の精密な噴火年代測定に寄与できるものと思われる。本分析は、京都大学の理学系研究室で行う。 次年度に繰越す費用が少額(186円)発生したが、次年度の消耗費に含める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、2011年度以降の調査航海による海底音響データの入手、得られたデータの解析と、既存の岩石試料から得られた鉱物粒子の詳細な年代測定を行う。 年度前半は、年代測定を行うための京都大学、(株)京都フィッショントラック、東京大学、およびデータを所有している海洋研究開発機構などへの調査旅費を予想している(旅費460千円程度)。また、年度にわたり、データ処理を行うための計算機周りの物品、分析を行うための分析器具などが予想される(物品220千円程度)。データ処理のうち、特に音響反射強度のデータを処理するための人件費も予想される(人件費・謝金450千円程度)。研究成果の成果公表および学会発表に要する費用に170千円(その他費用)を想定している。前年度の繰り越し分(186円)は消耗品費にあてる。
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