研究課題/領域番号 |
24654181
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
小林 憲正 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (20183808)
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研究分担者 |
高山 健 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 教授 (20163321)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 星間塵アイスマントル / 宇宙線 / アミノ酸前駆体 / 軟X線 / 生命の起源 |
研究概要 |
1.分子雲中でのアミノ酸前駆体の生成機構を探るための実験装置(クライオスタットおよびガス混合装置)のデザインを行った。一酸化炭素,メタノール,アンモニア,水蒸気の混合比を精密に設定した上でその混合気体をつくる装置を作成した。これとクライオスタットを結合し,さらに本年度購入した四重極質量分析計を取り付けることにより,次年度,上記の混合気体を凍結した「模擬星間塵アイスマントル」に高エネルギー加速器機構で準備中のデジタル加速器からの重粒子線の照射を行う予定である。 2.模擬星間塵アイスマントルへの粒子線の予備実験として,模擬星間物質(気体)への粒子線照射を行い,アミノ酸前駆体の生成を詳細に調べた。一酸化炭素・アンモニア,もしくは一酸化炭素・アンモニア・水蒸気の混合気体に,タンデム加速器(東京工業大学)からの2.5 MeV 陽子線を照射したところ,照射中に気相中でもや(固体有機物)が生成した。また,その生成物中のアミノ酸を定量したところ,主要生成物であるグリシンの生成量は,照射電気量(吸収エネルギー量)に比例することがわかった。これらのことは,アミノ酸前駆体が,従来考えられていたように,中間体小分子(シアン化水素など)の反応により生じるのではなく,気相中で直接生じていることを強く示唆する。 3.2.と同様に,模擬星間物質としてメタノール・アンモニア・水の混合物を作成し,これに重粒子加速器(HIMAC, 放医研)からの炭素線やアルゴン線を照射した。生成物を加水分解し,アミノ酸の生成量を精密に測定中である。 4.粒子線と光子の化学進化における役割の比較を行うため,アミノ酸やアミノ酸前駆体に重粒子線(HIMAC)および軟X線(NewSUBARU)の照射を行った。有機物の変成に対しては,重粒子線よりも軟X線の方がより効果的であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
模擬星間塵アイスマントルへの粒子線照射を行い,その場でのアミノ酸前駆体生成を調べる本実験計画の中で,(1)デジタル加速器の整備(分担者の高山が担当),(2)模擬アイスマントル作成装置のデザイン,(3)他の加速器を用いた混合気体への粒子線照射によるアミノ酸生成機構の推定,(4)星間での有機物生成・変成におよぼす高エネルギー光子の役割に関する実験などが予定どおり進行した。これらをもとに,平成25年度は,模擬アイスマントルへのデジタル加速器からの重粒子線照射という,世界初の実験の遂行が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,まず,デジタル加速器からの粒子線を模擬星間物質に照射実験を行い,アミノ酸前駆体の生成に関して,前年度のタンデム加速器を用いた実験との比較を行い,デジタル加速器およびそれにより発生させた高エネルギー重粒子線の評価を行う。次に,前年度作成したガス混合機,購入した四重極質量分析計を,デジタル加速器のビームラインに設置したクライオスタットにとりつけ,その場での模擬アイスマントルを作製し,さらにそれへの重粒子線照射によるアミノ酸前駆体の生成について詳細に調べる。 生成機構を調べるための赤外分光計は,連携研究者の田村(国立天文台から東大へ移籍)が準備する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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