研究概要 |
本研究は、水温既知の環境下で生育された造礁サンゴ骨格を用いた、炭酸塩の炭素・酸素二重置換同位体組成と形成水温の正確な関係式の構築を目的とする。また、これまでほとんど研究例のない、酸素分子の二重置換同位体組成(Δ35・Δ36)の計測法の開発と素過程に伴う、同位体組成と同位体分別を明らかにする。これまで得られた成果は以下の通りである。 1)Delta XPによる二酸化炭素の二重置換同位体組成の計測システムの確立 東京工業大学のDelta XP安定同位体比質量分析計を用いた二酸化炭素の二重置換同位体組成の計測システムを確立した。先行研究を行っているすべての研究室ではMAT253型の同位体比質量分析計を用いて計測されており、より小型のDelta XP型で実施した例はなく、本研究が初めての成功例となった。計測精度に関しては、MAT253型とほぼ同等の数値を得ることができた。また、MAT253型で必ずみられる、イオン分子計測の非線形性についてはDelta XPでは認められず、生データの補正を必要としない利点があることがわかった。 2)与那国島ハマサンゴ骨格炭酸塩の二重置換同位体組成の計測 2001年に琉球列島与那国島沖で採取した、水温既知の環境下で生育した造礁サンゴ(ハマサンゴ)骨格の二重置換同位体組成(Δ47,Δ48, Δ49)を2年分計測した。生育水温とΔ47の直線回帰の相関係数は-0.86と非常に高い結果となり、サンゴ骨格のΔ47が水温復元に十分実用的であることを示すことがわかった。一方で、直線回帰の傾きは先行研究に比べて約3倍大きくなった。この原因は不明であるが、動的同位体効果の影響が考えられる。 3)今年度は温度制御下で人工的に形成された炭酸カルシウムのΔ47,Δ48, Δ49計測を行った。また、酸素分子の二重置換同位体組成の計測法を確立した。
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