研究概要 |
極限ナノ非平衡プラズマの生成と応用への挑戦に関する初年度計画に基づき, 以下の成果が得られた. (1)極限ナノ非平衡プラズマ生成を実現するためには, プラズマ状態をナノスケール空間中に局在させる必要がある. つまり, ナノ空間中に十分な数の原子・分子を確保することが重要である. そこで, 通常の気体中放電ではなく, より原子・分子密度の高い溶液中を反応場とし, 溶液中におけるプラズマ生成装置の製作, 及び放電システムの確立を行った. 針状の電極を使用し, 高電圧パルスを印加することで, 溶液中においてもプラズマ生成が可能であることを確認した. また, 放電波形をオシロスコープを介して取得し解析可能なシステムの立ち上げを行った. (2)ナノスケールでのプラズマ生成を実現するために, ナノ物質が放電触媒として作用することを期待している. そこで, この効果を実証するための実験を行った. なお今回の実験は, ナノ物質の放電触媒作用の有無評価が目的であるため, 計測が容易である大気中において行った. 針状電極の表面に炭素ナノ物質であるカーボンナノチューブを塗布し, カーボンナノチューブの有無に対する放電形態の変化を光学顕微鏡により観測した. その結果, カーボンナノチューブを針状電極に塗布することで微弱ストリーマ放電がカーボンナノチューブの周辺で頻繁に発生することを明らかとした. この現象はカーボンナノチューブを塗布しない場合には観測されないことから, ナノ物質がプラズマ生成に対して放電触媒として効果的に作用することを示しているものである. 今回の実験は大気中で行ったため, ナノチューブ周辺の微弱ストリーマ放電がミリメータスケールに拡散していたが, (1)で作製した溶液中での放電にカーボンナノチューブ触媒を利用することで, ナノスケールでの放電実現が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究において, カーボンナノチューブが大気中において放電触媒として作用することを実証することに成功した. そこで次年度以降では, 初年度に製作した溶液中での放電システム中にカーボンナノチューブ電極を導入し, カーボンナノチューブの有無に対する放電波形の変化を詳細に解析することで, ナノスケールプラズマ生成の可能性を追求する. また, カーボンナノチューブの放電触媒作用を高める目的で, ナノチューブ表面へナノ粒子をコーティングした表面修飾ナノチューブを利用し, ナノスケールプラズマの安定生成を実現する.
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