研究課題/領域番号 |
24654186
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
畠山 力三 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (00108474)
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研究分担者 |
金子 俊郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30312599)
加藤 俊顕 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (20502082)
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キーワード | ナノスケールプラズマ / カーボンナノチューブ / 非平衡プラズマ |
研究概要 |
極限ナノ非平衡プラズマの生成と応用への挑戦の二年度計画に基づき以下の成果を得た. (1) 前年度製作した液中放電装置を利用し, プラズマのナノスケール化を試みた. ナノスケールプラズマが発生した際の放電特性に関しては, これまで全く報告がなされておらず未知の領域と言える. 従って, ナノスケールプラズマの放電信号が本装置で検知可能かを予測することが必要である. そこで, まずは放電特性のプラズマスケール依存性を測定した. 放電スケールの制御は, 針ー平板電極における針先端の形状をミリメートルからマイクロメートルの範囲で制御することで実現した. その結果, 放電スケールが減少するにつれて, 放電開始電圧が線形的に低下していくことが判明した. さらに放電電流自体も減少していく傾向が明らかとなった. これらの特性からプラズマがナノスケール化した際の放電特性を予測すると, ナノスケール領域においても測定限界以上の放電電流が得られることが予測され, 本システムにおいてナノスケールプラズマが生成された場合に, 十分信号として取り出せることが明らかとなった. (2) プラズマのナノスケール化を実現するために, 針ー平板電極における針形状をナノスケール化することを試みた. 具体的には針電極表面に直径数ナノメートルのカーボンナノチューブを誘電泳動塗布法により配向固着させ, 先端にナノスケールの曲率をもつ針電極を実現した. この電極を用いて放電特性を測定したところ, カーボンナノチューブが無い場合に比べ, 僅かではあるが放電開始電圧が低下する傾向にあることが判明した. この効果がカーボンナノチューブの効果によるものかどうか, さらにはナノスケールプラズマの生成の有無に関しては, 次年度に詳細な検討を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画において, 今年度はナノスケールプラズマ特性の評価を行うことを目的としていた. 実際, 今年度の研究において, プラズマスケールと放電特性の相関関係を明確化することに成功した. プラズマのナノスケール化までは実現していないものの, 今年度得られた知見によりナノスケールプラズマ生成実現の可能性が大いに高まったと言えることから, おおむね順調に進展していると判断した次第である.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画最終年度にあたる次年度は, ナノスケールプラズマの安定生成と特性評価を目的に研究を展開する. 具体的には, 前年度までに確立した配向カーボンナノチューブ固着針電極を用いて放電特性の精密な測定・解析を行い, ナノスケールプラズマからの放電特性の同定を実現する. さらに, 高感度カメラを用いることで, ナノスケールプラズマの可視化を行い, ナノスケールプラズマの挙動を詳細に明らかにする. これらの基礎研究に加え, 最終年度はナノスケールプラズマのバイオ応用に関する研究も行う. 生体細胞に対し, ナノスケールプラズマを直接照射することで, 細胞膜の局所破壊の有無, 膜組成, 及び細胞機能に与えるプラズマ効果に関しても詳細に検討を進める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は, プラズマのナノスケール化に伴う放電信号の測定を中心に行った. 申請段階においては, 放電がナノスケール化へと進展するにつれ, 放電信号が極めて微弱となると予想していたため, 超高感度の電流ー電圧測定が可能な電子部品の購入が必須であると考えていた. しかしながら, 実験を進めるにあたり, 既存の電流―電圧測定システムにおいても微小スケールの放電信号を計測可能であることが判明したため, 本年度の支出額が予定より少なくなり, 次年度使用額が生じることとなった. 今回発生した次年度使用額は, 実験計画の遅れから生じるものではないため, 次年度以降の実験計画に大きな影響は無い. 一方で, 今年度の支出を予定より抑えることができたため, 次年度に計画している生体細胞とナノスケールプラズマの相互作用に関する実験に関して, 規模(生体細胞の種類, 数等)を拡大して行う予定である.
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