研究実績の概要 |
極限ナノ非平衡プラズマの生成と応用への挑戦の三年度計画に基づき以下の成果を得た. (1) 前年度までに確立した, ナノスケール針状電極を用いた純水中での放電に関して, 詳細な放電機構解明に関する実験を行った. 具体的には, ストリーマ放電が開始する低印加電圧条件下において, 電子雪崩由来の発光像と液中内気泡生成由来のシャドーグラフ像の時間発展比較から, ナノスケールプラズマの進展機構解明を目指した. その結果, シャドーグラフ像の広がりに比べ, 発光領域の拡大が明らかに早期に開始することが判明した. このことは液中内において, 気泡領域が生じる前に電子雪崩に伴う放電現象が生じている可能性を示唆している. すなわちナノスケールプラズマの進展が, 溶媒分子のイオン化に由来する新たな放電モデルにより説明できる可能性があると言える. (2) 上記の純水中での放電モデルをより一般化させるため, 異なる溶媒下での同様の放電機構解明を行った. 溶媒としては, 生体応用を見据えて生理食塩水を用いた. その結果, 純水の場合とは大きく異なり, ストリーマ放電が生じる電圧よりさらに低電圧下で電極全体が気砲領域で覆われ, 円柱状気泡内放電が生じることが分かった. また, 電極構造を針 ‐ワイヤー型構造から同軸型構造に変更し, 上記と同様の実験を行った結果, 同様の傾向が得られた. この結果は液中放電が針電極周辺に発生する局所的な電界にのみ支配されることを示唆している.
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