研究課題/領域番号 |
24654188
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
齋藤 和史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70251080)
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キーワード | 微粒子プラズマ / 微粒子プラズマ流 / 微粒子プラズマ渦 / 磁化微粒子プラズマ / 微粒子の噴き出し |
研究概要 |
前年度の研究によって,YCOPEX装置では微粒子を結晶状態にして流れを作ることが容易ではないことが明らかとなったため,比較的容易に微粒子結晶を作ることができるYD-1装置を用いた.円筒ガラス管のYD-1装置に,円筒軸方向に永久磁石で磁場を印加して軸周りの微粒子の流れを作り,実験を行った.YD-1で得られた知見はYCOPEXでの実験に活用できる. 中性ガスの圧力が高い場合には微粒子は薄い層の円盤として2次元的に分布し,圧力が低い場合には微粒子はある程度厚みを持った円盤として分布する.磁場を印加することでイオンが方位角方向に回転し,そのイオンに押される形で微粒子が回転を始める. 2次元的に分布している状態で磁場の強さを変えると,微粒子が同心円状に種々の構造を形成することが明らかとなった. また,厚みを持って分布している状態で磁場の強さを調節し,実験領域での磁場の強さが1.5 kG程度とすると,微粒子が円盤中心部から重力に逆らって上方へと吹き出す現象が観測された.この現象は,茶葉等が沈んでいる湯のみの湯をスプーン等で一方向に掻き回したときに,茶葉等が底の中心部に集まり,中心部で上昇する現象(Ekman境界層,Ekmanポンピング)に類似していると考えられる.ただし,茶葉等は,流体運動の単なるマーカーであるのに対して,帯電微粒子の場合には微粒子そのものが運動の主役であるという本質的な違いがある. これらの場合にも,微粒子は強結合系をなしておらず,結晶構造を形成していない.本来の研究目的からは若干ずれているが,逆に,微粒子プラズマには強結合系以外にも多様な現象が潜在的に含まれていることを示していることがわかり,重要な成果であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最終的な目的の一つは,結晶構造を保った微粒子流を生成して障害物との相互作用を調べる実験を行うことである.しかしながら,結晶構造を保ったままの微粒子流を作ることが非常に困難であって未だに解決策が見出せていない.一方で,結晶構造を作っていない,弱結合系の微粒子プラズマ系を用いた実験では,特に,磁場を印加した場合について,物理学的に非常に興味深い現象を見出すことができている.結晶構造をもった微粒子集団に流れを与えるという観点からは非常に遅れていると言えなくもないが,研究業績の概要でも書いたように,弱結合系としての微粒子プラズマにおいて観測される現象の多様性を明らかにすることができているという点を考慮して,さらに,建屋改修に伴う部屋の移動に費やした時間が予想よりかかったことも含めて,やや遅れているという判断になった.
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今後の研究の推進方策 |
結晶構造をとらない弱結合の微粒子プラズマにおける流れと障害物の相互作用,特に,障害物下流側における乱流形成について実験的に研究する.同時に,結晶構造を保ったままの微粒子流形成について,引き続き考察を行い,可能な限り,今年度中に実験的に実現したい.現在考えている具体的な方法の一つとしては,障害物の周りにあらかじめ微粒子結晶を形成した上で実験板に傾斜をつける(微粒子に流れを与えるために重力を利用している.そのため,実験板に傾斜をつける必要がある)ことを考えている.ただし,この場合には,実験盤一杯に微粒子結晶を形成する必要があるために,非常に多量の微粒子を必要とする.また,実験板に瞬時に傾斜を与える方法が見いだせていない. 一方,円周状のガラス管に磁場を印加することによって見出すことのできた,2次元微粒子円盤の同心円状の構造変化,及び,3次元微粒子円盤中心からの微粒子の吹き出し等の,非常に興味深い現象については,磁場と構造の関係,生成されたプラズマ・パラメータとの関連,とりわけ重要であろうと予想される中性粒子の圧力との関係などについてさらに研究を進める.部分的には,すでにletterやproceeding等として発表しているが,今年度中にfull paper としてまとめたい.
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