本研究は、研究代表者はこれまでに成功している「低圧力・無磁場・高密度表面波プラズマ源」を利用して従来の有磁場マグネトロンプラズマでは実現できなかった面的に均一なスパッタを試み、従来の概念を打ち破るような新しいスパッタ装置の実現のための指針を得ることを目的としている。前年度の研究により、種々のスパッタ材料を対象とし電磁界シミュレータを用いたスロットアンテナの最適化のシミュレーションをおこなうとともに、装置の制作をおこない、1Pa以下の低圧力プラズマ生成、10e11cm-3を超える高密度なプラズマ生成を確認し、さらに比較的均一な成膜分布を実現できることを確認した。 本年度は、マイクロ波放射部の形状を変化させることにより、マイクロ波によるプラズマ生成の面内均一性を向上させることに成功し、10cm四方において膜厚分布のばらつきが10%以内という、非常に均一な成膜が実現できることを確認した。さらに誘電体スパッタにおいて非常に重要であるターゲット表面に発生する負バイアス電圧に着目した。誘電体表面の電位を測定することは従来方法では非常に困難であるため、我々は新たにターゲット表面から発生する負イオンのエネルギーに着目し、この計測からターゲット表面電位を評価する研究を進めた。その結果、RFバイアス電力増加によるバイアス電圧増加、マイクロ波電力増加によるバイアス電圧低下といった、スパッタにおいて基礎的かつ重要なターゲット表面電位に関する知見を得ることができた。 2年間にわたる本研究により、従来の概念を超える無磁場での均一なスパッタ成膜という新しいスパッタ成膜法について、その基礎となる知見を得るとともにその実現に対して非常に明るい見通しを得ることができた。
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