研究課題/領域番号 |
24654195
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
浜口 智志 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60301826)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プラズマ / プラズマ医療 / 生理学的薬物動態モデル / PBPKモデル / シュミレーション |
研究概要 |
生理学的薬物動態(PBPK)モデルとは、生体中の薬物(化学物質)の吸収・分布・代謝・排出(ADME)の0次元モデル(グローバルモデル)であり、生理学の分野で長く活用されている数学モデルである。本研究では、機構のよく知られている血液凝固プロセスに注目し、プラズマ照射による血液凝固プロセスを記述するPBPK モデルを構築することを目的とする。プラズマ照射された液体(血液)中の反応活性種(ROS/RNS 等)生成のグローバルモデルも構築し、PBPK モデルと合わせてシミュレーションを行う。これにより、プラズマ医療の大きな課題である、低温大気圧プラズマ照射による止血・血管再生・創傷治療の生理学的機構を定量的に解明することが可能となる。本年度の研究では、グローバルモデルによる液相中の反応活性種(ROS/RNS 等)の濃度の時間依存性シミュレーションシステムの開発を行った。プラズマ照射条件は、気相におけるシミュレーションから得られるが、これは、すでに他の研究機関で研究がおこなわれているため、それらのモデルや過去の文献の結果を用いて、我々の液相シミュレーションへの入力パラメータとした。本年度に構築された液相シミュレータには、電子、イオンを含む37の化学物質に対して、114 の反応速度方程式に導入されており、現在、プラズマ照射による水溶液中のROS/RNSの動態を計算するコードしては、発表されているものの中で、最も広範囲の化学物質に対応したものとなった。また、純水へのプラズマ照射実験を行うための、プラズマ装置の開発と照射実験を行った。更に、PBPK モデルは、文献調査と専門家との面接により、血液凝固系および血管再生プロセスを記述するものを構築中であり、現在、細部の検証を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グローバルモデルによる液相中の反応活性種(ROS/RNS 等)の濃度の時間依存性シミュレーションシステムの開発は、極めて順調に進んでいる。血液凝固系および血管再生プロセスをPBPK モデルは、複雑であり、シミュレーション用にコーディングするまえに、より詳細な検討が必要であるため。
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今後の研究の推進方策 |
2 年目となる平成25年度には、本年度に開発した溶液中の活性種に対するグローバルシミュレーションコードを用いて、パラメータサーベイを行う。このシミュレーションの結果は、PBPK モデルの入力パラメータとなる。また、血液凝固系のPBPK モデルの慣性させ、そのシミュレーションシステムの開発を行い、年度の後半には、プラズマ条件をさまざまに変えた時の生学的反応が明らかにする。また、研究代表者らが大阪大学医学部と現在行っている創傷治療に関する研究の実験結果とシミュレーション結果を比較して、その精度を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、実験結果とシミュレーションの比較を行うため、研究費は、本年度同様、プラズマ照射装置の開発や使用ガスなどの消耗品費、コンピュータ環境の整備のための物品費、研究発表や調査のための旅費に使用する。
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