電磁プラズマ推進機は中,高温度領域プラズマの噴射により,化学推進では実現できない高速の長距離飛行を行おうとするものである。推進機の推力と飛行速度は,噴射プラズマの密度と温度によって決定されるので,プラズマ生成とイオン加熱の相対的制御により推力と速度の調整が可能になる。 本研究では,単一のヘリカルアンテナから放射される高周波回転電磁界によりプラズマ生成とイオン加熱を同時に行うことで,推進機の小型化,高効率化の可能性を示すことを試みている。ヘリカルアンテナから放射される電磁波の周方向モード数mは主として1であるが,伝搬方向によって符号が変化する。研究で用いているライトヘリカルアンテナは外部磁場に対して逆方向にm = +1の右旋波を,外部磁場方向にm = -1の左旋波を同時に励起する。 有限温度を考慮した不均一プラズマ中の2次元波動伝搬解析により,ヘリカルアンテナが異なるmの波を双方向に励起すること,m = +1波はカットオフ周波数が高く広範囲に伝搬し高密度プラズマの生成に適しており,m = -1波はイオンサイクロトロン共鳴点においてイオンに大きな電力を与えるためイオン加熱に適していることが確かめられた。 実験では,単一のライトヘリカルアンテナによるプラズマのスタートアップのもとで,外部磁場の方向を変えることによるプラズマ生成量の変化及びイオン加熱の有無を計測した。その結果,外部磁場の方向に依存してプラズマ密度とイオン加熱の特性が変化し,しかもその依存性がmの正負とよく対応することを明らかにした。特に,加熱にともなうイオンエネルギー分布関数のエネルギーシフトと半値幅の増大が実証された。
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