研究課題
金の薄膜を基板とした表面上に芳香族チオールの有機分子を吸着して自己組織化単分子 (self-assembled monolayer; SAM) 膜をつくり、この表面の光反射率過渡応答計測をフェムト秒の時間スケールで行った。この測定は超短パルス=レーザーを用いたポンプ=プローブ計測に依って行い、単分子膜内部でベンゼン環の歪みのコヒーレントな振動に伴う反射率の微弱な変化を実時間計測することに成功した。この手法は単分子のスケールで分子の運動を実験的に解析できることを実証した。この超高速実時間計測の結果、チオール分子の歪みの対称性に依ってエネルギーの散逸の経路が異なることが示唆された。並行して、このような分子膜を種々の金基板上に作成してラマン分光計測も行い、ここで単分子レベルに達するほどに高感度な測定が可能になったのは、金の表面の凹凸で誘起される電場増強効果に由来するラマン過程が有効なためであることも示した。また、銀のナノ粒子の表面に長鎖チオールの有機分子を吸着し、同様に、フェムト秒のポンプ=プローブ計測光反射率の実時間計測を行った。そこでは、フーリエスペクトルに炭化水素鎖の振動に由来するモードがピークとして現れた。特に88THz付近の周波数成分はピコ秒のスケールで周波数シフトしていた。これは銀のナノ粒子コロイドのプラズマ振動からC-H伸縮へエネルギーが伝搬している様子を反映している。この結果は、金属と有機分子の接合に置いて、光照射のエネルギーが振動に伝搬する過程が超高速実時間計測を用いることで明らかにできることを意味している。
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