研究課題/領域番号 |
24655008
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
尾関 寿美男 信州大学, 理学部, 教授 (60152493)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 磁場 / カーボンナノチューブ / 磁場配向 / キラリティー |
研究概要 |
研究期間中に,カーボンナノチューブ(CNT)の生成過程の化学種とCNT自身との磁気的相互作用を利用して核生成から成長までの構造形成の全過程に磁場を有効に働かせて,磁気異方性の大きいベンゼン環の集積体である形状磁気異方性CNTの太さと長さ,配向性,グラフェン網面内のキラリティーを磁場制御する。とくに,物性の観点からシングルウォールCNTのカイラル指数の磁場制御をめざす。 H24年度は,強磁場(<10T)中に高温電気炉(<1500K)を自作して設置し,マルチウォールCNT(MWCNT)およびシングルウォールCNT(SWCNT)をエタノール蒸気の化学気相成長法(CVD法)で磁場中合成することに成功した。MWCNTは4T以上で磁場配向させられることが,SWCNTでは磁場によって金属性CNTの量を増やすことができる兆候を得た。また,エタノール液相中での加熱によってSWCNTが生成することをラマン散乱で検出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度の計画では6項目について検討する予定であった。そのうちCVD法,液相合成,触媒検討,カイラル指数決定の4項目を実施し,1項目(回転磁場)はパルス磁場に変更して実施したので,ほぼ予定通り実施したといえる。実施できなかった1項目はカーボンナノチューブの電導度測定で,購入予定のインピーダンス測定器が予算上入手できなかったのと,よく成長したCNTの合成に成功していず,また一本のCNTを扱う技術がないことが原因で達成できていない。 実施項目としては,磁場中高温炉の製作,CVD法によるMWCNTおよびSWCNTの磁場中合成,液相からのCNT合成,ラマン散乱によるカイラル指数の決定,キラル金属触媒膜の予備的調製を行った。構造決定や定量法としてのラマン散乱とUV測定法の確率と触媒調製法の検討はH25年度への良い準備となった。 回転磁場による検討はパルス磁場による実験に切り替えて実施した。永久磁石の回転磁場は磁場強度が小さいので磁場効果が得られないと予測し,10T超級のパルス磁場発生装置を製作して対応した。
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今後の研究の推進方策 |
萌芽研究として試みたSWCNTの磁場による構造制御の可能性が示されたので,化学種の電荷や電流などと磁場をシンクロナイズするように条件検討して,サイクロトロン運動のモードによるキラリティー制御を中心に据える。磁場による半導体性や金属性のSWCNTの選択的合成の可能性を念頭に,申請書に記述した以下の実験的検討を実施する。 ○液相の回転効果 ○自由界面におけるローレンツ効果 ○磁場と電流とのシンクロ効果 ○電導度測定の試み
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費:高温電気炉の性能アップのための材料,部品費,および電気化学的セルを利用した金属触媒製作用の金属試薬とセル,CNT調製用キャリアーガスボンベ,排ガスなどのトラップ用寒剤などの費用が必要である。 測定料:CNTの観察のための電子顕微鏡の使用料およびラマン散乱装置の使用料を計上する。 マグネット保守費:現有の10Tマグネットは20000時間の点検保守の時期を迎える。そのための費用が必要である。(700千円) 旅費:成果を発表するための国際学会(International Conference of Magneto-Science;フランス)と日本磁気科学会年会への参加のための旅費を計上する。 残額は,実施準備が十分でないために購入予定のインピーダンス測定装置を見送ったために生じた。
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