磁気異方性の大きいベンゼン環の集積体である形状磁気異方性カーボンナノチューブ(CNT)の太さと長さ,配向性,およびグラフェン網面内のキラリティーを磁場制御することを目指し、前年度に引き続き、CNTの核生成から成長までの構造形成の全過程に磁場を印加した。今年度は化学気相成長法(CVD法)による生成過程の化学種とCNT自身との磁気的相互作用を利用して,シングルウォールCNT(SWCNT)の直径の選択的合成やカイラル指数の磁場制御をめざした。磁場によって直径の大きな、金属性のSCNTが得られる予備結果が得られていたが、条件検討などの詳細は検討しなかった。以前に自作した強磁場(<10T)中高温電気炉(<1500K)を改良して,触媒の種類と量、温度、圧力を変化して生成物を得て、ラマンスペクトル、紫外可視吸収スペクトル、元素分析などによって検討した。 SWCNTをエタノール蒸気を用いたCVD法で磁場中合成した。Co/Mo触媒の方がNi/Cu触媒よりも磁場による生成物選択性高く、4T以上の磁場の印加によって高ラマン波数(230cm-1)にピークが出現し、磁場による直径の減少を示した。今回は、金属性のみならず、半導体性生成物の磁場生成が示唆された。また、触媒量は少ない方がこの磁場選択性は強く表れた。結晶性は、Co/Mo触媒を用いると磁場によって低温側で改善されるが、Ni/Cu触媒を用いるとどの温度でも改善された。 昨年度の液相分解法による結果と今回のCVD法との結果には、磁場による230cm-1のラマン線の成長などの共通点がある。また、CNTが単層か多層かの違いも磁場効果の観点からは共通点がある。たとえば、今回SWCNTへの磁場効果は4T以上で現れたが、多層CNTの磁場配向も同様に4T以上で現れた。これらを手がかりに、CNT生成への磁場影響の機構解明に向けた取り組みがさらに必要である。
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