研究課題/領域番号 |
24655009
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
井上 圭一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90467001)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ロドプシン / ナトリウムポンプ |
研究概要 |
平成24年度は交付申請時の研究計画に従い、我々が新たに発見したナトリウムポンプ型ロドプシンのダイナミクスや構造について、主にフラッシュフォトリシス分光法や赤外分光法を用いた研究を行った。 その結果反応中間体の可視吸収に基づいて反応素過程を決定することに成功し、さらに野生型および変異体についての全反射型赤外分光法による構造解析からナトリウムイオンの結合部位がタンパク質の細胞外側にあることを明らかにした。またナトリウムポンプ型ロドプシンは周辺のカチオンをリチウムイオンに変化させるとリチウムを輸送するが、その場合フォトサイクルはナトリウム輸送時のものと大きな差は無かった。その一方でカリウム以上のイオン半径の大きい一価カチオン存在下では水素イオンを同じ方向に輸送するが、その場合の光反応サイクルの速度はナトリウム輸送時のものと比べて非常に長く、数秒に及ぶものであり、中間体の種類も大きく異なっていた。またこれまで野生型のものについては詳細なイオンの輸送活性が調べられてきたが、変異体のものについては知見が少なかった。そこで本年度19種類の変異体についてその輸送活性を測定したところ、膜貫通領域において重要と思われるAsn112、Asp116、Asp251の3つの残基については変異により活性が完全に無くなることが明らかとなった一方で、イオンの結合が阻害される変異体であっても強い活性を持つものがあることが示された。このことは既知のロドプシンと異なり、ナトリウムポンプ型ロドプシンにおいて暗状態におけるイオンの結合は輸送に必須でないことを示唆している。 本年度はこれらの結果についてNature Communicationsへ論文発表を行い、さらに招待講演を含む17件の学会発表を行った。また本成果についてプレスリリースを行ったところ、3件の新聞報道が成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はフラッシュフォトリシス分光法によるダイナミクス研究や赤外分光法による構造研究に成功し、さらに変異体による輸送メカニズムの解明に成功し、それらをNature Communicationsへ論文発表することまで達成した。これらを初年度において達成したことは、当初予想されたものよりもかなり大きな進展であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において最初のナトリウムポンプ型ロドプシンについては、反応素過程や分光による構造研究について、当初の予想以上のペースで明らかにすることに成功した。最終年度に当たる平成25年度においては低温赤外分光法による中間体の構造研究だけでなく、他の海洋細菌由来のナトリウムポンプ型ロドプシンについても研究を拡大していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度にあたる平成25年度においてはあらたに備品の購入は行わず、分子生物学用のプラスチック製品(チューブ、チップ等)や試薬などの消耗品を物品として購入する(120万円)。また生物物理学会や、分子科学討論会などの国内の会議を中心とした成果発表のため20万円を旅費として使用し、さらに論文投稿や印刷費などに20万円を予算として計上する。
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