研究概要 |
本年度は,パルス列励起による有機固体中分子間振動モードの選択励起のための光学系の構築を行った。チタンサファイアレーザー再生増幅器の出力(800 nm, 150 fs, 1kHz, 500 mJ/pulse)の一部を第2高調波に変換した光を励起光とする,非同軸パラメトリック増幅器を構築し,フェムト秒白色光を増幅して,パルス幅約20 fsで500nm~650 nmで波長可変なパルスの発生に成功した。この超短パルス光を2つに分け,一方を10 cmの石英ロッドを通過させた後マッハツェンダー型干渉計に通すことで,100 fs程度の時間間隔を有するパルス列の発生を行った。干渉計の両腕の光路差を調整することで,パルス列の間隔を70~400 fsの間で自在に制御することができる。次にこのパルス列を励起光に用いて有機固体の振動励起を確認するための光学系の構築を行った。2つのフェムト秒パルスの一方を,直線偏光子を通過させ試料に照射し,別の励起光により振動励起されたときに引き起こされる複屈折性を検出するラマン誘起カー効果測定の光学系を構築し,二硫化炭素を試料に用いて装置の性能を確認した。 また,測定対象として考えているルブレン単結晶の光誘起ダイナミクスの事前評価のため,フェムト秒過渡吸収測定による励起状態ダイナミクスの観測を行った。400 nm,170 fsの励起光により,440-550 nmにかけて正の吸収が,励起直後から遅延時間500 psにかけてスペクトル形状を変化させながら立ち上がり,一重項励起子から三重項励起子への変換過程が観測されたと考えている。
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