研究課題/領域番号 |
24655012
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉田 弘幸 京都大学, 化学研究所, 助教 (00283664)
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キーワード | ナノ粒子 / 量子ドット / 電子準位 / 光電子収量分光法 / 光電子分光法 / 無機・有機界面 |
研究概要 |
本研究では、有機半導体中に分散したナノ粒子の電子準位を決定する新しい実験手法を開発する。これまで電子準位決定に広く使われている光電子分光法は、ナノ粒子の保護基や有機半導体からの信号や、ナノ粒子の帯電により、ナノ粒子からの信号を検出するのが困難であった。本研究では、試料帯電の影響を受けにくく、検出深さの大きな光電子収量法に着目し、ナノ粒子からの弱い信号を選択的に検出する特別な工夫をすることで、ナノ粒子の電子準位を決定する。 これまでに、ナノ粒子測定のための光電子収量分光装置の設計・製作を行ない、エネルギー可変単色光源を完成させた。その後、高真空に排気できる試料槽を取り付け、光電子による試料電流の測定を試みてきた。ノイズが多く、満足な測定ができていない。原因としては、簡易的に作成した試料ホルダーの保持が不適当であり、また絶縁も不十分であること考えられる。そこで、位置を精密に微調整できるセミマニピュレーターを入手し、これが取り付けられるように真空槽の改造を行っている。これに合わせて、真空準位や仕事関数が決定できるように、阻止電場型光電子分光装置やケルビンプローブなどが取り付けられるように、装置の拡張を行っている。 このような装置の開発と並行して、酸化チタンのナノ粒子の低エネルギー逆光電子分光の測定を試みている。この結果、測定中に電子線照射により準位が変化することがわかってきた。すなわち、電子の授受により、ナノ粒子の準位が影響を受けることを示している。変化を詳しく調べると、真空準位は大きく変化するのに対し、フェルミ準位を基準とした伝導準位はほとんど変化しない。このような結果を、本研究で開発を進めている光電子収量分光と関連させ、ナノ粒子の電子準位を決定する際の問題点を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、平成25年度中に光電子収量分光装置を完成させる予定であった。しかし、測定には成功していない。設計の大きな見直しを行い、装置の完成に向けて製作を進めている。一方、酸化チタンナノ粒子の低エネルギー逆光電子分光測定を進め、ナノ粒子測定の課題が明らかになってきた。この結果は、今後の本研究の目標達成に大きく役に立つ。
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今後の研究の推進方策 |
まず、光電子収量分光装置を半年以内に完成させる。前回の経験から、問題の多かったサンプル周りを丁寧に組みたて、調整を行う。 一方、装置開発と平行して、既存の紫外光電子分光や低エネルギー逆光電子分光装置による測定を進めて、ナノ粒子の電子準位測定についての問題点を詳細に検討する。本研究で目標とする光電子収量法について、適切な試料膜厚、測定時の光量や電流についての情報を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、平成25年度中を予定していた光電子収量分光装置の完成が遅れたため、次年度使用研究費が生じた。 この研究費は、当初の予定通り、装置の製作に充当する。
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