研究課題
本研究は、有機半導体中に分散したナノ粒子の電子準位を決定する新しい実験手法の開発とこの装置を用いたナノ粒子のイオン化エネルギー測定を目的とした。電子準位決定のもっとも有力な実験法である光電子分光法は、 検出深さが1ナノメートル程度と小さいため、ナノ粒子の保護基や有機半導体からの信号に妨害されやすく、また試料帯電の影響を受けやすいため、ナノ粒子からの信号を検出するのが困難である。本研究では、試料帯電の影響を受けにくく、検出深さの大きな光電子収量法に着目した。本研究のナノ粒子測定のための光電子収量分光装置では、重水素ランプで発生した真空紫外光を回折格子で単色化し、試料表面に集光する。試料表面から放出された光電子を正電圧を印加した電極で集め、チャンネルトロンで検出する。光の波長の関数として全光電子の収量を測定し光電子収量分光スペクトルをえる。スペクトルの立ち上がりがイオン化エネルギーに対応する。この測定手法を、オレイルアミンを保護基とするナノ粒子CdSの薄膜に適用した。薄膜は、透明導電性ガラス(FTO)上にディップコート法、ドロップキャスト法により調製した。測定の結果、紫外光電子分光では試料帯電のため再現性のあるスペクトルが得られなかったのに対し、本研究の手法ではスペクトルの立ち上がりからイオン化エネルギーを決定することができ、当初の目的を達成した。エネルギー準位接続を議論するためには、イオン化エネルギーに加えて試料の仕事関数を決定する必要がある。試料帯電の影響を受けにくい測定法として、ケルビンプローブ法の適用を検討している。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
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