研究の主目的にかかげた電子励起状態にあるTiO2光触媒の格子振動を共鳴ラマン散乱によって計測することはできなかった。その原因は予想外に信号強度が弱かったためと推定している。同時並行して実施したSrドープNaTaO3光触媒の研究においては、ラマン散乱がSr2+イオンが占有するサイト(ペロブスカイト格子のAサイトまたはBサイト)を検知する有力な手段となることを見いだした。固相合成した光触媒においてはBサイトがSr2+によって置換され、水熱合成した光触媒ではAサイトがもっぱら置換されることを明らかにした。これまでNaTaO3光触媒をSr2+を含むアルカリ金属元素でドーピングするとイオン半径の類似性を根拠としてAサイト置換体が生じると信じられてきたが、これを実験的な証拠にもとづいて覆す成果である。光励起された電子と正孔が再結合する速度はBサイト置換体で遅く、Aサイト置換体で速かった。ドーピングする元素の選択ばかりでなく、ドーピングサイトの最適化が電子-正孔再結合反応を抑制して光触媒を高活性化する鍵となることが明らかとなった。平成26年度にはこれらの成果を国内学会および国際学会の招待講演などで発信した。あわせて研究成果を総括する原著論文を国際学術誌に2報投稿して掲載可となったところである。
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