1.研究開始時はOPOパルスレーザーによる760nm光を用いた蝶タイ型キャビティリングダウン分光を行う予定であったが、レーザー故障により連続発振型レーザーによるキャビティ増強吸収分光へと方針転換を行った。488nmで連続発振(CW)するレーザーと、これを駆動するための直流安定化電源、レーザーをパルス化するためのオプティカルチョッパーを購入し、全てがスペック通り作動することを確認した。二枚の高反射率凹面鏡(反射率99%)により作られるキャビティ(長さ50cm)を形成して、これにCWレーザーを導入してキャビティとの共鳴を最適化するための条件を模索した。先行研究の文献によれば、キャビティ透過光強度は入射光と同じオーダーであるため目視できると予想したが、実際のところ視認は困難であった。これは適用しているレーザーが多モード発振であることが原因であることがわかった。 2.赤外キャビティリングダウン分光法と量子化学計算により、π電子関与型水素結合クラスターの構造解明を行った。ピロール含有二成分クラスターを超音速ジェット法で生成し、クラスターサイズに応じたNH伸縮振動のシフトを評価した。(1)ピロールとN-エチルピロールとの二成分クラスターにおいて、三次元受容体によるFish-Bite構造は2つのエチル基配向が互いに逆向きの非対称型であることが明らかとなった。(2)ジエチルケトンとの二成分クラスターにおいて、NH-OC水素結合の配向角度とエチル基のねじれ角度が互いにカップルした構造異性体を見出した。
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