研究課題/領域番号 |
24655020
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
井村 考平 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (80342632)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 単一分子分光 / 吸収分光法 / 近接場光学顕微鏡 / 金ナノ粒子 |
研究概要 |
吸収分光法は,分子構造に特有なスペクトル情報を取得できることから,分子の同定に有効である。その一方で,蛍光分光法と比べて感度が低く,単分子感度を実現することは困難である。吸収分光観測で測定される吸光度は,試料の分子数密度に比例する。したがって,光照射面積を小さくすれば,観測対象となる分子数密度を高くすることができ,少数分子の計測を実現することができる。本研究では,開口型近接場プローブの開口内に発生する近接場光を用いて数十nmの光照射面積を実現し,これに出力安定な光源を組み合わせて,高感度な吸収分光測定を実現することを目的とした。 平成24年度は,本研究に必要となる要素技術の開発と本提案の原理検証を行なった。具体的には,微小光照射面積を実現するための開口型近接場プローブの作製とその評価,また作製したプローブを用いたナノ構造体の吸収スペクトル測定より測定原理の検証を行った。近接場プローブは,ガラスファイバをフッ酸溶液でエッチィング処理して先鋭化し,これに金属を蒸着コートして作製した。開口は,プローブ先端を平坦な基板表面に押し付けてプローブ先端の金薄膜を除去し作製した。この方法で,直径100 nm-400 nmの開口近接場プローブを作製した。微小な吸光度変化を測定するためには,安定な光源を用いることに加えて,近接場プローブの透過率を大きくすることも重要である。作製したプローブの透過率を測定し,直径100 nmのプローブにおいて良好な透過特性であることを確認した。さらに,金ナノ粒子をテストターゲットとして吸収測定装置の測定限界を見積もった結果,開口径30 nmの近接場プローブを用いれば,数nm程度の単一の金ナノ粒子のスペクトル計測が可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた研究ステップを概ね予定通りにクリアすることができている。測定対象とする試料の準備も進んでおり,概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初,購入を計画していた出力安定化光源は,値上げの影響などにより予算の範囲外となり,購入を断念した。代替となる光源を選定したが,当初の予定機器に比べて出力強度が少し低いため,より高い出力安定性が必要となった。購入した光源を用いたテスト計測を行なったが,これまでは良好な結果が得られていない。光源出力の光ファイバーへの導入方法などに改善の余地があり,今年度はそれを進めていく計画である。一方,プローブの作製については,さらに緻密な開口径の制御が必要であり,そのための機械部品の設計,製作を進めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,当初計画した支出と実際の支出総計の差額が千円程度であり,概ね計画通り研究費を使用した。次年度も当初の研究計画にしたがって,研究費を使用する計画である。
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