研究課題/領域番号 |
24655021
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
御園 雅俊 福岡大学, 理学部, 教授 (40314471)
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キーワード | 光周波数コム / 高分解能分光 |
研究概要 |
分子スペクトルは広い波長領域にわたって複雑なスペクトルを持つため、その精密計測には、高分解能、高周波数精度、広波長範囲で測定可能な分光システムの開発が必要である。本研究では光周波数コムを用いて、これらの要求を満たす超高分解能分光システムを製作した。さらに、ヨウ素分子とナフタレン分子の超高分解能分光を行うことによって、本研究によるシステムの有用性を示した。 製作した分光システムは、色素レーザーを分光光源としたヨウ素分子の飽和吸収分光システムと、光周波数コムによる光源の周波数校正システムからなる。光源の色素レーザーは、半値半幅60 kHz 以下の狭い線幅を持ち、今回使用した色素では560 – 620 nm の波長範囲で発振可能である。光周波数コムとしては、モードロックTi:Sapphire レーザーを用いた。このモード間隔周波数とオフセット周波数をGPS 衛星からの基準信号にロックすることで、高い周波数精度が得られた。周波数校正システムでは、ダブルパス構成の音響光学変調器とを利用して、連続的に高精度な周波数計測が可能となるようにした。この方法によって、掃引する色素レーザーの周波数を、これまで以上に容易かつ高精度で決定することが可能となった。 この分光システムを用いて、ヨウ素分子およびナフタレン分子の超高分解能分光計測を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度においては光周波数コムと単一モード色素レーザーを組み合わせた高分解能レーザー分光システムを組み上げた。両レーザー間で生じるビート周波数を直接測定するため、音響光学変調器を利用した周波数シフトシステムを作成した。 平成24年度には、これに先立って、音響光学変調器を利用しない、より安価で簡便な分光システムの開発を行ったので、平成25年度の研究によって、2つの方法によって、高分解能なレーザー分子分光計測が可能となった。平成25年度中に、これらの装置をヨウ素分子の飽和吸収スペクトルの測定に適用し、さらに音響光学変調器を使用するシステムは、代表的な芳香族分子であるナフタレンの分光計測にも適用した。 このように、予定していた音響光学変調器を利用したシステムだけでなく、バンドパスフィルターを利用した周波数マーカーシステムの開発も行い、これらの実証実験に成功した。 以上のように、当初計画よりも内容の充実した成果を上げることに成功したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、これまでに製作し、その有用性が実証された2つの超高分解能レーザー分光システムによって、多原子分子の超高分解能レーザー分光計測を進めて行く。とくに、ナフタレン分子の第一励起状態においては、過剰エネルギーによって励起後の反応過程が本質的に異なることが予想されており、この研究に本研究で製作された超高分解能レーザー分光システムが力を発揮すると考えられる。このため、過剰エネルギーの異なる複数のバンドを測定し、それらの状態におけるダイナミクスについて、解析を進めて行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
音響光学変調器の購入を平成25年度に予定していたが、既に購入済みのものが流用可能となった。一方で、平成26年度に活発に成果発表を行うための旅費が必要となった。 平成26年度は精力的に多原子分子の超高分解能レーザー分光計測を進めて行くため、これに必要な消耗品や薬品類の購入が主となる。 また、論文を出版し、国際会議・国内学会等において活発に成果発表を行い、本研究において製作されたシステムの有用性をアピールし、また、実際に分子分光を行った成果を広く社会に還元する。このための旅費にも充てる。
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