研究課題/領域番号 |
24655024
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩本 武明 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70302081)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ジシレン / ジシレニド / ケイ素 / π電子系 |
研究概要 |
メタセシス型反応を用いた新規ジシレンの合成を目的として、安定ジアルキルシリレンユニットを持つジシレニド(ビニルアニオンのケイ素類縁体)と種々のアリールハライドとの反応を精査した。2,4,6-トリイソプロピルブロモベンゼンとの反応でジシレニドの対カチオンとしてカリウムを用いた場合にはメタセシス型の反応を経由したと考えれるジシレンは生成せず、ジシレニドが酸化された生成物が主として得られた。一方対カチオンとしてリチウムを用いたところ、メタセシス型の反応を経由したと考えれるジシレンがわずかかに生成した。同様な反応は対応するヨードベンゼンでもみられ、この反応ではジシレニドの対カチオンの選択が重要であることを見出した。また、関連してジシレンのアルキル基の嵩高さの僅かな変化によりケイ素-ケイ素二重結合の解離が制御されることを見出した。 また、2-ブロモビフェニルとジシレニドを反応させたところビフェニル置換ジシレンが生成した。しかし、生成したジシレンは熱的に安定ではなく、2'位のC-H結合がケイ素ケイ素二重結合に1,2-付加したジベンゾシロール誘導体と2位のフェニル基のC=C結合とジシレンが[2+2]付加した化合物が生成することを見出した。また、2-ブロモアズレンとカリウムジシレニドとの反応では4位にジシレニドが付加しさらに分子内のC=C結合とSi=Si結合が[2+2]環化付加した化合物が得られた。ジシレン上に導入した芳香族基がケイ素-ケイ素二重結合に接近している場合には、これらの芳香族ハロゲン化物に対してジシレニドがシリルアニオンおよびジシレンの二官能性を持って反応することを明らかにした。また、今年度はジシレン同士の直接的なカップリング反応の為の前駆体ジシレンの合成を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケイ素-ケイ素二重結合が解離しやすいことを利用したジシレンのメタセシス型反応による新規ジシレン合成法の確立に向けて、今年度計画していたジシレニドとアリールハライドとの反応については、メタセシス型の反応の為に必要な条件の精査がすすんだ。この精査では予想外の分子内付加生成物得られ、その構造解析等に時間を要した。もうひとつの目標である、ジシレン同士の直接的なカップリング反応の開拓については、前駆体合成と条件検討の為の準備がおおむね整った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、前年度精査した合成条件を最適化した後、ジシレニドと芳香族ジハライド等との反応により、π電子系で連結された様々なジシレンを合成し、その構造およびケイ素-ケイ素二重結合とπ電子系間の相互作用等を明らかにする。そして、熱的なシリレンの脱離による新たなケイ素π電子系の合成を検討する。例えば、フェニレンで連結されたジシレンは熱反応により、高い電子輸送能を持つと期待されるポリ(フェニレン-ジシレン)を与えると期待される。フェニレン架橋ジシレンについては、近年2例ほど報告されているが、本研究で着目しているような二重結合解離反応による合成は報告されていない。 これまで安定なケイ素π電子系化合物が数多く合成されているが、含ケイ素二重結合が3つ以上共役した化合物(ポリシラポリエン)の合成例はない。これらは導電性有機材料であるポリジアセチレンのケイ素類縁体のモデル分子として重要である。この研究項目では、ケイ素-ケイ素二重結合が複数連結されたヘキサシラトリエンの合成と分子構造と各種物性の解明を行う。具体的には申請者らが合成したシクロプロペンのケイ素類縁体を用いる。この化合物のケイ素-ケイ素二重結合周りは完全に平面であり、最も短いケイ素-ケイ素二重結合距離を持つ二重結合性の高いジシレンである。このジシレンを用いて同様なアニオン化、酸化的カップリングにより対応するジエンを合成する。同様な反応を繰り返すことでケイ素-ケイ素二重結合ユニットを複数もつペルシラポリエンを合成し、それらの化合物の構造と物性を精査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
メタセシス型の反応の為に必要な条件の精査の際に、予想外の分子内付加生成物得られた。その構造解析等に時間を要したため、収率向上の精査の検討を継続して行うために、「次年度使用額」が生じた。今年度は年度当初に、メタセシス型の反応により生成するジシレンの収率向上の精査を行う。
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